2012年3月8日木曜日

震災1年:苦悩続く「放射性物質」対応、小売りは自主調達の契機に

、結構気にしてないようで気にしてる人も多いですよね。しっかりと、安全なものを売って欲しいですね。




「Anshin」を英語で「ease of mind」と意味付け、「Safety」と「Trust」が合わさってはじめて「Anshin」につながる―――。小売り大手イオン<8267.T>でサプライチェーン改革を担当してきた近沢靖英執行役は先月、米国フロリダ州オーランドで開かれた食品安全についての国際会議でスピーチを行った。


世界中から約950人が参加した国際食品安全イニシアティブGFSI(Global Food Safety Initiative)会議。2日目のプログラムには「食品安全と自然災害、東日本大震災から学ぶこと」というセッションが設けられた。世界でも前例のない事態に対して、各国の関心は非常に高かったという。一部の国では日本の食品への輸入制限が続いており、「放射性物質」と「食の安全」という課題に日本がどう対応するか、全世界が目を凝らしている。

日本では小売企業やメーカーが新たな取り組みを開始しているが、消費者の求める安全と国の基準とのはざまで、本当の安全とは何か、模索する動きがなお続いている。

<小売りの改革、「安心・安全」志向を追い風に>

原発事故を受けて高まる消費者の安全志向は、小売企業にとって、差別化を図る契機にもなる。これまでは、大手メーカーのあいたラインなどを活用して生産する加工品が主流だったプライベートブランドは、「安心・安全」を背景に、生鮮野菜や鮮魚、総菜へと広がりを見せている。生産や流通の履歴管理が可能なPBは、小売業にとって、安全をアピールできる武器となり得る。

昨年7月、市場に流通した牛肉から国の暫定基準値を越えるセシウムが検出されたことを受けて、7―8月の牛肉の消費は前年比30―40%減と大きく落ち込んだ。しかし、7月下旬に自社ブランド牛肉の全頭検査に踏み切ったイオンは、8月に売上高が前年水準を回復、年末には前年を上回ったという。

イギリスで牛海綿状脳症(BSE)が発生した際の事例を認識していた近沢氏は、迷うことなく全頭検査に踏み切った。生産・流通履歴が明確なPBの強みを発揮した出来事だった。こうした動きは、消費者の要請に応えて、早急に取り組みを強化できる企業とそうでない企業の格差拡大や再編、卸や流通のあり方の変化にまでも波及する可能性がある。

イオンでは現在、自社生産野菜から鮮魚へ、さらにはデリカ・総菜へとPBを拡大させている。近沢執行役は「震災で、PBへの取り組みは加速するだろう」とみており、デリカ・総菜の売上高に占めるPBの比率を13年度に40%に高めたい方針だ。

2010年に千葉県の農家との共同出資で農業生産法人を設立し、農業に参入したローソン<2651.T>は現在、4カ所の「ローソンファーム」を展開中。新浪剛史社長は「3年後に50カ所にしたい」と話す。消費者のニーズをくみ取ることのできる流通企業と農家が組むことで、良いものを作ることができれば「日本の農業に将来性はある」と断言する。

生鮮野菜も扱う「ローソンストア100」を積極的に展開するなど、震災前から取り組んできた「差別化戦略」だが、震災によって利便性が広く認識され、新たな消費者の取り込みに成功したローソンにとって、安全な野菜の供給は追い風となる。現時点では、ローソンファームの野菜の売上高は、生鮮野菜取扱店舗の売上高の数%に過ぎないが、50カ所のファーム展開時には、10%程度まで高めたいとしている。

<国の基準と消費者の「安心」に格差、板挟みのメーカー>

小売企業の動きに反し、メーカーでは、消費者が求める安全と国の基準の格差に悩んでいるのが現状だ。自主検査か、検査機関への委託か、方法は違っても、安全確保に向けた検査体制の整備は当然との認識は各社共通している。ただ、「安全は確保できても、安心は個人が感じるもの」(大手食品メーカー)であり、国の基準に対する不信感が、消費者の「ゼロベクレル」志向に拍車をかけている。

明治ホールディングス<2269.T>は昨年12月、粉ミルク「明治ステップ」の一部製品から放射性物質が検出されたとして、交換を発表した。検出されたのは1キログラム当たり最大31ベクレル。国の放射性セシウム暫定基準値200ベクレルを下回っていた。4月から導入される国の新基準値は、暫定基準値より厳しく設定されるが、粉ミルクは50ベクレルとなっており、商品交換時の数値はこの水準も下回っていた。

ある食品メーカー幹部は「社告まで出して交換を告知した。そうしなければ、経営への影響は甚大だっただろう。各社は、この出来事がトラウマになっている」と話す。公表以降、明治HDには、対応できだだけでも2万2000─3000件の問い合わせが殺到した。粉ミルクに関しては自主検査の結果をホームページ上に公表しているものの、現在でも売上高は低迷しており「安全という結果を積み重ねていくしかない」(IR広報部の梅本隆司部長)と話す。

日本乳業協会は、加盟各社に独自の検査を要請し、2月29日に結果を公表した。牛乳については「自治体がモニタリング検査して安全となった原乳を使っているため、製品の検査は必要ないというスタンスは変わっていない」(企画・広報部の内田幸生部長)ものの、学校給食での牛乳への不安とそれを受けた厚生労働省からの要請があり、検査を行ったという。結果は、全て新基準の50ベクレルを下回っていたほか、検出限界値の10ベクレルも下回った。  内田氏は「国が定める50ベクレルで十分に安全だと認識している」とし、あくまで基準は50ベクレルとする考え。そのうえで「牛乳をやめる学校もあるが、成長期のカルシウム欠乏と基準以内の放射能リスクとどちらが大きいかなど、冷静に理解してほしい」と訴える。

<ゼロベクレル化に疑問の声も、手探り続く>

原発事故への対応や、国が安全と言って流通した食品から放射性物質が検出される例があったことなどから、国に対する消費者の不信感は強い。厚生労働省は、原発事故を受けて急きょ策定した放射性物質の「暫定基準値」を見直し、4月から「新基準値」を導入する。

人が食品から受ける放射線量を年間5ミリシーベルトから1ミリシーベルトに引き下げ、コメや野菜、水産物などを「一般食品」とし1キログラムあたり100ベクレル、「牛乳と乳児用食品」は50ベクレル、「飲料水」は10ベクレルとする。厚生労働省の諮問で新基準値案を審議していた文部科学省の「放射線審議会」は同案を認める答申を行ったものの、基準は「厳しすぎる」との意見も多く、被災地の産業などへの配慮を求める意見が付けられるなど、国の考え方も揺れている。

基準値が下がることで、過去の暫定基準値は「危険」だったのではないかと不安が増す。新基準値を少しでも超えればすぐ「危険」と判断する―――。消費者の不安は尽きないだろう。

過度な対応が消費者の不安を煽ったり、東北の農業や漁業、酪農の復興を妨げることにならないか、企業は自問自答しながら対応に臨んでいる。ローソンの新浪剛史社長は「サンプルチェックをする体制作りは必要。ただ、公表はことさら必要ない」と述べ、消費者がパニックになることがないように、国の基準をベースに安全を担保していくという姿勢だ。セブン&アイ・ホールディングス<3382.T>も「あくまで国の基準で考える。検査体制については説明するが、検査結果の数値は公表しない」(広報担当者)という。

国は原発の「事故収束宣言」を出した。しかし、業界では「放射性物質問題とは、長期間向き合わなければならないと覚悟している」(大手食品メーカー)という。イオンでも、九州産の牛肉などこれまで一度も検出されなかった商品の検査を簡易検査にする一方、新たに検査を強化する商品について検討を進めており、手探りの状態は続いている。

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