戦後最高値を連日更新する急激な円高に対して、政府・日銀が31日、ついに円売り・ドル買い介入に踏み切った。介入を受けて、同日の東京外国為替市場の円相場は一時、1ドル=79円台半ばまで急落したが、その後の海外市場で円は1ドル=77円台後半まで戻すなど、円高傾向に明確な歯止めがかかったとは言えない状況。市場では今回の大規模な介入のタイミングを評価する声がある一方、介入効果の持続性には懐疑的な声も多い。
「納得いくまで介入する」との安住淳財務相の発言から、「介入規模は過去最大だった前回8月4日の4.5兆円を上回るのではないか」との見方も拡大。市場では「投機筋も円買いを仕掛けにくくなった。米経済指標が好転すれば、1ドル=80円台前半まで円安に振れてもおかしくない」(クレディ・スイス証券の深谷幸司チーフ通貨ストラテジスト)との声も聞かれる。
一方で、単独介入の効果を疑問視する声もある。東日本大震災後の3月18日に踏み切った円売り介入は、日米欧が協調し、7月上旬までほぼ1ドル=80円台を維持した。しかし、8月4日の日本の単独介入では、一時、3円近く円安方向に振れたものの、数日で値を戻した経緯があるからだ。
今回も単独介入であるため「円高・ドル安傾向は歯止めがかからない」との声も強く、三菱UFJ信託銀行の塚田常雅資金為替部グループマネジャーは「米追加緩和観測が根強いことに加え、欧州危機が再燃する可能性もあり、円買い圧力は収まらない」と指摘する。
今後の注目は、米連邦準備制度理事会(FRB)が11月1、2日に開く連邦公開市場委員会(FOMC)の行方。追加の金融緩和に踏み切る可能性は高くないとの見方が多いが、FOMC後の会見でバーナンキFRB議長が追加緩和を示唆する発言をすれば、日米金利差の縮小の思惑から円高再進行のきっかけになる可能性がある。今回の政府・日銀の介入について、SMBC日興証券の野地慎シニア債券為替ストラテジストは「2日深夜にFRBが緩和を示唆すれば、日本は3日が休日で手を打てない。事前にやっておかないとズルズルと円高が進行しかねないと考え、先手を打ったのでは」と分析する。
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