2011年10月28日金曜日

大王製紙巨額借り入れ 逆らえぬ威光、社を牛耳った「井川家の一族」

そんなに負債があって、会社は成り立っていたのでしょうか。深い闇ってなんだか恐ろしげです。




 「絶対的に服従する企業風土があった」。大王製紙の井川意高(もとたか)前会長が連結子会社から巨額の現金を借り入れていた問題で、同社の特別調査委員会は28日に公表した調査報告書で、井川一族による支配態勢を厳しく指弾した。前会長の依頼に逆らえず、子会社幹部はわずか1年半の間に100億円超を貸し出していた。四国の一製紙会社を業界トップ3にまで押し上げた創業者一族。その威光は社の隅々に届いたが、同時に「深い闇」も生み出した。




 ■「事件は想定外」

 28日午後5時半、東京都内で開かれた大王製紙の記者会見。同社の佐光正義社長や特別調査委員会の奥平哲彦委員長ら4人が顔を並べた。

 冒頭、佐光社長は「関係者の皆様にご迷惑をおかけして申し訳ございません」と述べ、約15秒にわたって深々と頭を下げた。

 「(井川前会長は)リーダーシップのある人物であり、私とも十分なコミュニケーションもあった。残念だが、事件の想定はできなかった」

 こう語った佐光社長は、井川一族の支配力低下の必要性を説明する一方で、「グループから井川家をすべて排除しようとする考えはない」とも強調し、複雑な心中をのぞかせた。

 ■異論許さぬ「威光」

 「逆らえなかった。異論を言えない空気があった」

 前会長に無担保で融資を実行した理由について、子会社の経理担当者は異口同音にこう明かす。

 複数の関係者によると、前会長は「明日までに用意してほしい」と、子会社役員らに融資を依頼。子会社は言われるがまま支出した。調査報告書は「資金の移動を命ずるとき、子会社では取締役といえども従うことに疑問を持たなかった」と指摘している。

 こうした井川一族による絶対的な支配態勢を作り上げたのは、創業者・井川伊勢吉の長男で、井川前会長の父親の高雄氏だ。

 高雄氏は社長就任後、家庭紙に参入し、ティッシュペーパー「エリエール」を大ヒットブランドに育て、会社を業界3位に押し上げた。

 高雄氏は社長退任後も会長や顧問に就任。高雄氏の次男で、前会長の実弟でもある高博氏も取締役を務めるなど、「井川家の一族」は多大な影響力を誇った。

 ■同族が「専制君主化」

 同族経営に詳しい学習院大学の浅羽茂教授(経営学)は「素早い意思決定ができるなど、同族経営はメリットもある。だが社内的なチェックが効きづらく、専制君主化してしまうことも少なくない」とする。

 浅羽教授は“専制君主化”が問題となった例として、平成19年に消費期限改竄(かいざん)を隠蔽(いんぺい)したなどとして、創業者一族の社長が引責辞任した洋菓子チェーン「不二家」を挙げる。「創業者なら、なおさら自らを厳しく律さなくてはいけない。だが井川前会長は『会社のカネは自分のカネ』と考えてしまったのかもしれない」と浅羽教授は話す。

 今回、大王製紙は高雄氏を顧問から解任し、高博氏の関連事業担当職を解くなど、「脱創業者一族」を一気に進めた。関係者によると、両氏には27日に佐光社長が辞職を促したが、ともに一旦は反発したという。

 高雄氏の営業姿勢などから「四国の暴れん坊」との異名を取った大王製紙。躍進に導いた同族企業による企業風土が大きく変わろうとしている。

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