2011年8月10日水曜日

爪痕大きい世界連鎖株安、内需シフトの日本株は鈍い戻り余儀なく

グローバル化って、こういうところで影響が大きすぎるね。


10日の東京株式市場では輸出株から内需株にシフトする動きが顕著になったが、今後もこうした動きが続けば日本株の上昇は限定的との見方が出ている。

引き続き為替動向が懸念材料で一段の円高局面では為替介入、株安となれば指数連動型上場投資信託受益権(ETF)買い入れなど、政府・日銀による対策頼みの相場展開が予想される。世界連鎖株安に歯止めはかかったもののその爪痕は大きそうだ。

米連邦準備理事会(FRB)が9日発表した連邦公開市場委員会(FOMC)声明を受けて米株市場が急反発した流れを引き継ぎ、10日の東京市場も4日ぶりに反発。日経平均は一時9100円台を回復した。ソシエテ・ジェネラル証券グローバル・エクイティ部長の久保昌弘氏は日本の復興需要などを考慮すると「ドルキャリー取引が増えれば日本株にマネーが流入する可能性がある」との見方を示した。しかし、日経平均株価は8月に入って欧州財政懸念や米国債の格下げを受け、9日には一時8600円台と3月17日以来、約5カ月ぶりの安値水準に下落した。8月1日の1万0100円付近から7営業日で実に1500円も下げた。

大和証券・投資情報部次長の西村由美氏は9日の取引で「決して押し目買いが多く入っている感じではない」とし、目先戻る展開となっても「上値は重いだろう。引き続き反発のきっかけを探る展開だ」との見方を示した。欧州系証券の株式トレーダーは1万円回復は秋から年末との見方を示す。東日本大震災前の1万0200―0400円の水準はなお遠く、「連鎖株安の爪痕は大きい」と株式市場関係者は異口同音に話す。

10日の取引で象徴的だったのは電気・ガスや食品、医薬品などの上昇だ。FOMCを受け今後も円高基調が続くとの見通しが強まったことから、東京電力<9501.T>やニトリホールディングス<9843.T>など円高メリットを享受できる銘柄が買われる一方、ある株式トレーダーは中国系ソブリンが輸出関連ではなく内需関連に関心を持ち今後も継続的に買いを入れる可能性を指摘する。大手証券のトレーダーも10日後場の取引では、ハイテクなど輸出株から内需株にシフトする動きを感じ取ったという。戻り局面では時価総額や指数への寄与度を考慮すると、内需株中心の方が輸出株中心の相場よりも値動きは鈍く、上昇・下落とも鈍い日本株の特徴がより強まる。

日本株にとって為替は今後も大きな懸念材料だ。ソシエテ・ジェネラルの久保昌弘氏は「今後2年間はドルが(ほぼ)ゼロ金利で借りられるため政府・日銀が為替介入しても無意味で、当面は円高基調が続く」とし、輸出株は上昇してもアンダーパフォームと予想する。みずほ総研シニアエコノミストの武内浩二氏は「ドル/円が70円台前半に振れ、その水準が定着すれば企業業績に影響が出るので株価を下押ししやすい」と指摘する。

政府・日銀による4日の為替介入は市場に安心感を与えたが、欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁は4日、理事会後に開かれた記者会見で日本の当局による円高抑制に向けた単独の為替介入について「理事会には非常に明確な見解がある。このような介入は、多国間の総意に基づいて実施される必要があると考えている」と否定的な見方を示した。日銀は追加緩和を実施したばかりで、円高を阻止するためにはFRBの金融緩和策に対応する動きとして当面単独介入に踏み切るしかない、とみずほ総研の武内氏は指摘する。

一方、枝野幸男官房長官は10日午前の会見で、円高への追加対策について、これからの検討だが、景気対策というより円高の影響を受ける方へのセーフティネットになる、との考えを示した。9日に日経平均が8600円台に下落すると、日銀のほか政府系金融機関による500億円規模の買いが観測された。日銀は8月に入って2日、3日、5日、8日、9日に240―250億円規模の指数連動型上場投資信託受益権(ETF)買い入れを実施している。日本株には買い手掛かりが乏しいことから、今後は政府や日銀の対策で株安を防ぎながら反発のタイミングを模索する展開になりそうだ。

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