普通に考えて、あれだけの自然災害、そして放射能・・・国債なんて売れないはずだよなあ。
米国債格下げを機に「次のターゲット」をめぐる思惑が市場に広がっている。財政不安を抱える先進国の筆頭である日本の国債格付けについて、ムーディーズ・インベスターズ・サービスは見直し中の格付け「Aa2」を早ければ月内にも引き下げる可能性がある。
円債市場では、月内に予想される菅直人首相の退陣で第3次補正予算や来年度予算論議が本格化し、震災復旧・復興に向けた財政拡大リスクが高まると予想。10年最長期国債は買い進めない状況が続いており、利回り(長期金利)が1%割れで定着するかどうか懐疑的な見方が出ている。
<国債先物の建玉が8万枚超、11カ月ぶりの高い水準>
国債先物中心限月9月限の建玉は11日の取引で8兆2525億円と中心限月ベースで2010年9月2日(8兆3759億円)以来、約11カ月ぶりの高水準を記録した。欧米債務問題や世界景気減速懸念などを背景に相対的に安全資産とされるドイツ・米国・日本の国債市場に世界のリスクマネーが流入。「日本国債市場では流動性が高い国債先物が選好されているのではないか」(国内証券)という。
質への逃避で市場心理が好転している円債市場だが、10年最長期国債利回り(長期金利)が9日に一時0.975%と約9カ月ぶりの水準に低下した後に、再び1%台に跳ね返されるなど1%を安定的に下回る動きになっていない。「すでにディーリング目的でないと買い進めない水準に到達しており、長期金利が1%を割り込んでもすぐに戻るのではないか」(生保)として投資家に慎重ムードが漂う。1日に10数ベーシスポイント(bp)も利回りが低下するドイツや米国の国債とは対照的だ。
<先進国の財政不安、国債の安全神話を再考との声>
クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市場では、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)による格下げがあった米国ソブリン(ユーロ建て)のプレミアムが7月29日に63.45ベーシスポイント(bp)を付けた後に、50bp台前半に低下するなどやや落ち着きを取り戻した。しかし、日本ソブリン(ドル建て)のプレミアムは100bp台で高止まったままだ。マークイットの算出によると、日本ソブリンのプレミアムは11日取引で105bp挟みの気配が示された。
国内金融機関の債券運用担当者は「安全とみられていた米国債が格下げされたことで、先進国の中で次の格下げ候補国に市場の関心が向かい始めた」と話す。その候補がギリシャ国債に対する金融機関の損失が大きいフランスとGDPに対する債務比率が大きい日本だという。
トリプルAの格付けを持つフランスに格下げ懸念が出た10日の欧州株式市場では仏銀行株が急落。フランスのサルコジ大統領は10日、経済・財政関係閣僚、および中央銀行総裁を召集し、財政赤字削減の加速に向けた対策をまとめるよう指示した。また、すべての政党に対し憲法で財政赤字を制限する案を支持するよう呼びかけ、市場の格下げ懸念払しょくに向けて迅速に動いた。
<日本の格下げ圧力、ムーディーズが月内にも見直し結果を公表>
米国に続き、フランスにも広がった格下げ懸念は、財政不安を抱える先進国に対する市場の警鐘といえる。バークレイズ・キャピタル証券・チーフ公的セクター・クレジット・アナリストの江夏あかね氏は「投資家が何となく買っていたリスクフリー、あるいはそれと同等の信用力とみなされる公的セクターの債券について、投資家は米国の格下げをきっかけに安全神話が永遠に続かない可能性を意識し始めた。『質への逃避』の意味を真剣に考える状況に直面している」と指摘する。
日本国債への視線も厳しさを増している。S&Pは1月、外貨建て・自国通貨建て長期ソブリン格付けを「AA」から「AA─」に引き下げ、その3カ月後の4月には格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」にして、一段の引き下げの可能性を示唆。ムーディーズは5月、日本政府の自国通貨建て・外貨建て債務格付け「Aa2」を引き下げ方向での見直しを発表。月内にも見直し結果を公表する見通し。
格付け見直しは、経済成長見通しの悪化と政府の緩慢な政策対応で財政再建に懸念が出てきたことが理由。財政再建が遅れる場合には、格付けに下方圧力が増大し、A格に転落する可能性にも言及している。ムーディーズは8月8日に、円高が日本の景気回復にとって信用上、マイナスになるとのリポートを発表。日本が着実に景気回復軌道に乗せるには「断固としたテクニカルな政策措置以上のものが要求されるだけでなく、国会で真剣な長期的改革を議論する必要がある」として、あらためて混乱する政治情勢に警鐘を鳴らしている。
<震災対応で強まる財政拡大圧力、新政権でも厳しい財政運営>
しかし、日本の財政改革が進む見通しは少ない、菅直人首相が示した退陣に向けた3法案のうち、成立済みの第2次補正予算案に続いて特例公債法案と再生エネルギー特別措置法案が8月31日に会期末を迎える今国会で成立する見通しとなった。次期政権では本格的な震災の復旧・復興が至上命題となるため、第3次補正予算や来年度予算の編成次第では一段と財政拡大圧力が強まるとの見方が根強い。
「復興財源の増税議論に関して、民主党内だけではなく、野党でも意見が割れている。財政規律を前面に打ち出せば打ち出すほど理解を得られないばかりか、新内閣の支持率低下を招く可能性も否定できない」(国内金融機関)として、来年早期の解散・総選挙が視野に入れば、財政再建路線がとん挫するリスクもあるとの声も出ている。
SMBC日興証券・マーケットアナリストの土井俊祐氏は、第3次補正予算において円高による産業空洞化等に対応する経済対策も盛り込まれる見込みで円高対応の経済対策は正当化されやすいと指摘する。その上で「民主党代表選への出馬が取りざたされる有力候補者の中で、財政再建派とみられる野田財務相でも厳しい財政状況に変わりはない」とみている。
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