がんがん円を刷って、円安に持ってっちゃえ!
一時1ドル=75円95銭を付け、戦後最高値を更新した“超円高”は、物価の下落で経済規模が縮小するデフレを加速させ、日本経済の体力をさらに奪う恐れがある。格安の輸入品の増大で安値競争が激化。先行きへの不安から消費者が節約志向を強めれば、需要が減退し供給過剰で物価を下落させる「需給ギャップ」が拡大する。中国など新興国の景気減速で原油などの資源価格も下落傾向にある。円高阻止に加え、デフレ脱却に向けた対策が急務だ。
■中国製が流入
「中国や韓国からの輸入品の価格が下がり、国内の繊維やアパレル、食品業界は値下げ合戦に巻き込まれ苦しくなる」。ニッセイ基礎研究所の櫨(はじ)浩一経済調査部長は、懸念を示す。
実際に7月以降、スーパー大手やインターネット通信販売大手は、輸入食品の「円高還元セール」を打ち出し始めた。円高は、輸入物価を押し下げ、消費者にはメリットもあるが、値下げ合戦に巻き込まれた企業の業績が圧迫され、賃金・雇用の悪化という形で家計に跳ね返ってくる。
東日本大震災からの復興に必要な建材なども安い中国製の輸入増大で、「特需を奪われ、国内メーカーには恩恵が及ばない」(建材業界)との懸念が広がっている。
日銀も「円高が収まらなければ、輸入価格は下がり続ける」と警戒する。
■需給ギャップ20兆円
円高不況で消費マインドが冷え込めば、デフレの根本的な原因である需要不足は一段と深刻化する。需要と供給の差を示す需給ギャップは23年1~3月期がマイナス3・8%で、金額に換算すると年間で約20兆円も需要が足りない。
「震災で供給が落ちたが、消費や設備投資が同じレベルで落ちた」(日銀幹部)ため、昨年10~12月期から横ばいで推移している。消費低迷や復興需要の遅れで足元では拡大している可能性がある。
新興国の需要増と米国の金融緩和による投資マネーの流入で高騰してきた原油や穀物などの国際市況も、欧米の景気悪化と中国の減速を背景に下落の兆候が広がっている。
企業のコスト増となる資源高や、家計を圧迫する食品値上げの沈静化は、経済には大きなプラス材料だが、統計上は物価の押し下げ要因となる。
■後手で小出し
総務省は12日に消費者物価指数の基準を5年ぶりに改定。旧基準では、今年4月から6月まで3カ月連続のプラスで推移していたが、新基準では2年4カ月連続のマイナスに下方修正された。「デフレは日銀の見通しより長引くことが確実」(エコノミスト)だ。
日銀は「1%の物価上昇」が見通せるまでゼロ金利政策を維持する方針を示している。だが、ゼロ金利を続けても、投資や消費を刺激し、需要を喚起する効果は出ていない。日銀の対応には「後手で小出し」との批判が根強く、円高阻止の観点からも量的緩和などの踏み込んだ政策を求める声が強まっている。
政府にも、本格的な復興需要を喚起する平成23年度補正予算の早期編成に加え、規制緩和や貿易自由化など需要創出につなげる中長期の成長戦略を打ち出すことが求められる。
2011年8月22日月曜日
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