自殺社員の労災認定について、居酒屋チェーン「ワタミ」の渡邉美樹会長がツイートしたことなどが、ネット上で批判されている。ワタミでは、勤務状況の認識が認定とは違うと反論している。
渡邉美樹会長自身は、自殺した社員に配慮したつもりの発言だったかもしれない。しかし、皮肉にも、それが逆に反感を呼んで、ネット上で炎上してしまった。
■「労務管理できていなかった認識はない」
報道によると、自殺した女性社員(26)については、神奈川労災補償保険審査官が2012年2月14日付で、月約140時間以上もの時間外労働で適応障害を発症したのが原因と結論づけた。そのうえで、遺族の労災申請に対し不支給とした横須賀労基署の決定を取り消すとした。不慣れな調理業務などを早朝までさせられ、休日も早朝研修会などをこなさなければならなかったという。この社員は、入社から2か月後に自殺していた。
その1か月前には、「体が痛いです」などとして、「どうか助けて下さい」という悲痛な叫びを手帳に記していた。
月140時間の時間外労働だとすれば、週休2日として1日7時間も残業していたことになる。午後5時が定時の場合では、深夜零時まで働いていた計算だ。
審査官がこう認定したにもかかわらず、渡邉会長は、報道された21日にツイッターで、「労務管理できていなかったとの認識は、ありません」と発言した。「彼女の精神的、肉体的負担を仲間皆で減らそうとしていました」とその理由を説明し、「労災認定の件、大変残念です」とつぶやいた。「ただ、彼女の死に対しては、限りなく残念に思っています。会社の存在目的の第一は、社員の幸せだからです」とした。
しかし、渡邉会長は、残業の有無などについては触れず、謝罪の言葉もなかった。そのことから、ネット上では、「月140時間の残業で労務管理できてたって?」「まさにブラックとしかいいようがないな」などと批判が殺到する騒ぎになっている。
■過去の発言も、次々にバッシング
ワタミのサイトでも2012年2月21日、自殺した女性社員の勤務状況についてコメントを出した。しかし、ここでも、「当社の認識と異なっておりますので、今回の決定は遺憾」とだけ述べ、認識とどう違うのか具体的な根拠を示さなかった。
渡邉美樹会長は、その後も女性社員についてツイートしたことで、批判を浴びた。学校法人理事長として姉妹校建設のためにバングラデシュを訪れたことに関し、「亡くなった彼女も期待してくれていると信じています」と発言した。これに対し、労災で自殺したとされているのに期待する気になるわけがないなどと反発する声が出ている。
この炎上騒ぎで、渡邉会長の過去の発言も、バッシングに晒されている。
10年8月にビジネス誌で「(ビル8階とか9階で会議中)いますぐ、ここから飛び降りろ!と平気で言う」と社員を叱ることが紹介されたことには、再び批判の目が向けられた。また、自らのブログで12年1月20日、都知事選に出馬したときに「自殺ゼロの社会」を訴えたと書いたことについても、「どの口がそれを言うのか!」などと反論が出た。
渡邉会長は、11年6月15日のツイートで「ワタミは天地神妙に誓ってブラック企業ではありません」と強調しているが、それもバッシングの材料になっているようだ。
ワタミの広報グループに取材すると、担当者は不在などとして、回答は得られなかった。
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