2012年2月14日火曜日

焦点:攻めに転じた日銀、欧州危機くすぶり緩和期待は継続

これが功を奏して、少しでもデフレ脱却して、若者にもお金が回ればいいけどね・・・


日銀は14日、物価安定の考え方を再定義し、1%の物価上昇を目指すことを明確化するとともに、達成に向けて10兆円規模の資産買入基金増額という追加金融緩和を断行、デフレ脱却と日本経済回復に向けた強い姿勢を打ち出した。

最近の経済や市場の前向きな動きを後押しする金融政策への転換で、デフレ脱却への取り組みが真剣ではないとする政治などからの批判に行動で答えた格好だが、欧州債務問題を中心とした世界経済・金融情勢は依然として不透明。デフレ脱却への道のりはなお険しく、成長力強化という長く続く課題に展望が開けるまで、日銀に対する緩和期待が収まることもなさそうだ。

<「攻め」の金融政策、先行き下振れリスクに先手>

白川総裁は金融政策決定会合後の記者会見で、追加緩和に踏み切った理由について、最大のリスク要因と位置づけている欧州債務問題への緊張が足元で和らぐなど、「最近の前向きな動きを支援し、日本経済の緩やかな回復経路への復帰をより確実なものとするため」と説明した。これまで景気の下振れリスクが高まったと判断した場合に追加緩和することが常態化していた白川日銀にとって、「攻め」の金融政策に転じた瞬間だ。そもそも足元こそ小康状態にある欧州情勢や金融市場の動向についても、日銀内では警戒モードが続いている。今後も市場の楽観と悲観が繰り返される可能性が大きい中で、先行き下振れリスクに先手を打つことが効果的との判断もあったとみられる。

<政府内からも日銀にいら立ち、政策姿勢を明確に>

さらに、野田政権が消費増税に突き進む中で、米連邦準備理事会(FRB)が2%のインフレ目標の導入や超低金利政策の時間軸の長期化などを打ち出し、政治だけでなく、政府部内からも「デフレ脱却に向けて日銀は動きが鈍い」との批判が高まっていたことが、日銀の行動を促した面もありそうだ。白川総裁は連日のように国会に呼び出され、消費者物価(CPI)の前年比で「中心1%」とする日銀の「中長期的な物価安定の理解」がFRBに比べてわかりにくい、との批判を浴びた。国会では「FRBの政策が日銀に近づいてきた」と答弁していた白川総裁も「政策姿勢が明確に伝わっていないならば、表現の工夫が必要」と物価安定に対する考え方の見直しに着手する。

<予想超える大規模緩和、デフレ脱却の決意表明と市場インパクト狙う>

しかし、FRBの金融政策運営に関する透明性向上策は、量的緩和第2弾(QE2)が国際商品市況の高騰を招くなど一段の金融緩和に批判的な米国内の政治圧力を受けた苦肉の策との見方も多い。一方、日本の場合は、米国とは反対にデフレ脱却へ金融緩和の拡大を求める声が圧倒的で、具体的な行動が伴わなければ納得が得られないのも明らかだった。まず、「中長期的な物価安定の目途」を導入し、日銀としてめざす物価水準を「1%」に明確化、さらに10兆円という市場予想を超える大規模な基金増額で、日銀のデフレ脱却に向けた決意をアピールするとともに、市場にインパクトを与えることも狙った。

特に凍結されてきた年金の物価スライドが実行される方針となり、デフレのために高齢者の年金が削られることになるなど、与野党ともデフレ脱却への強い姿勢を示さざるを得ない。解散総選挙後も取りざたされる中で、総選挙後の新政権がどのようなマクロ経済政策運営スタンスを採るのか、不透明度が極めて高いなか、日銀の危機感のボルテージも上がらざるを得ない状況がある。

<消費増税にらみ、強まる「デフレ脱却・円高阻止」の圧力>

ただ、白川総裁が会見で再三指摘したように、金融政策だけでデフレから脱却することは不可能だ。「民間企業、金融機関、政府、日本銀行がそれぞれの役割に即して取り組みを続けていくことが重要」で、官民による息の長い地道な対応が不可欠となる。一方、欧州情勢をはじめとした世界の金融・経済情勢は依然として不確実性が大きく、特に新興国経済の動向が日本経済の行方を左右する。

解散含みの政界では、消費増税議論と絡めてデフレ脱却・円高阻止の大合唱が収まる気配はない。政府と日銀のアコード(政策協定)に前向きな民主党の前原誠司政調会長は、日銀の決定を受けて「一定の評価はできるものの、大事なのは結果だ」と述べるなど、早くも一段の取り組みに期待する発言を行っている。内外情勢が不透明な中で、日銀の緩和政策の終わりもみえない。

0 件のコメント:

コメントを投稿