日本の主食は、果たして大丈夫なのでしょうか?
ここ数年値下がり傾向にあるコメの価格が上昇している。2010年産米で、卸業者間の取引価格は東日本大震災後から3~5割も上昇している。
まもなく新米の季節を迎えるが、2011年産米は震災や東京電力福島第一原子力発電所の事故の影響で、米どころの福島産や宮城産のコメは作付けが制限されている。また、野菜や牛肉、稲わらにみられる「放射能汚染」の影響を心配する向きもあり、卸業者間で10年産を確保する動きが高まっている。
■新潟産コシヒカリ40%値上がり
民間調査会社の米穀データバンクによると、取引価格が上昇しているのは2010年産米で、「自由米」と呼ばれる卸業者による10トン単位取引での実勢価格。玄米60キログラムあたりの関東地区の価格は、「新潟産コシヒカリ」が震災前の2011年3月9日に1万9100円だったものが、7月20日には2万6800円に値上がり。40.3%も上昇した。
同じ期間で、「宮城産ひとめぼれ」は1万1600円が1万6700円に、45.7%上昇。「秋田産あきたこまち」も1万2400円が1万8600円に50%アップと、それぞれ値上がりした。
値上がりの原因について、米穀データバンクは「11年産米の、放射能汚染の影響が不透明なことがあります。昨年中に収穫された10年産米は、放射能汚染されていないので貴重品になりつつある。とくに新潟産コシヒカリなどの銘柄米については買い手が殺到して値が上がっています」と説明する。10年産米を抱える卸業者が、値上がりを期待して売り渋っていることもある。
一方、農林水産省がまとめた10年産米の6月時点の出荷業者と卸業者との相対取引価格(速報値)によると、全銘柄の平均価格は1万2857円(玄米60キログラムあたり)と、前年に比べて0.9%値下がりしている。
「たしかに最近、卸業者間の取引価格が上がっていることは承知しています。ただ、それらは銘柄米を中心とした自由米で、業者がスポット的に購入している分です」(総合食料局)
■新米の流通次第で値上がりも
農水省は、「消費者に価格上昇の影響が波及することは、今のところない」という。米穀データセンターも、「22年産米の大半は流通済み。もうほとんど残っていません。まもなく新米も出てきますので、影響はほとんどないといえます」と説明する。
米どころの作付け制限で、11年産米の絶対量が不足することはないのだろうか。農水省は「(福島県と宮城県に対して)作付け制限はしていますが、その分を他県などに振り向けていて、概ねカバーしています。量的な心配はありません」と話し、供給不足による価格上昇については否定的だ。
ただ、今後の不透明感は拭えない。米穀データバンクは、「野菜や牛肉、稲わらのように、いま放射能汚染の流通への影響が懸念されています。たしかに新米は量的には足りているかもしれませんが、本当に(放射能の)影響がないかどうか。こればかりは実際に11年産米が収穫され、流通してみないことにはわかりません」という。
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