2011年7月24日日曜日

人馬一体!燃費30キロと走り両立 マツダ「デミオ」

こういつ、開発者の声が聞こえてくると、その車に対して興味が湧きますね!


 マツダは主力コンパクトカーの新型「デミオ」を6月30日に発売した。次世代環境技術「スカイアクティブ」を初めて採用し、「社運をかけた」(山内孝社長)という戦略車だ。ガソリン1リットル当たり30キロ走行できる「デミオ13-スカイアクティブ」は、ハイブリッド車並の燃費性能ながら140万円からとお買い得だ。開発者のプログラム開発推進本部の水野成夫主査(50)に聞いた。

 --燃費性能が話題になっている

 「山内社長が、2009年の前回の東京モーターショーで、『30キロ達成』を公約として明言し、この目標が至上命令になった。マツダは次世代の環境技術『スカイアクティブ』を進めているが、エンジンやトランスミッション(変速機)、プラットホーム(車台)など、ありとあらゆる要素で、低燃費化を進めている。今回のデミオは、フルモデルチェンジではなく、マイナーチェンジなので、エンジンをスカイアクティブ化しただけだ」

 --エンジンの改良点は

 「マツダでは、エンジンそのものの効率を上げるための開発に注力してきた。最大の特徴は、圧縮比を世界最高水準まで引き上げたことだ。シリンダー内のガソリンと空気の混合気の圧縮比は14・0で、少ない燃料でよりパワーを出せる構造になっている。ただ圧縮比を上げると、燃料が最も圧縮される前に爆発しまう異常燃焼が起きやすい。そこで、燃焼後のエンジンから排気されたガスをもう1度シリンダーに送り込むことにした。燃焼直後のガスは800度くらいの高温だが、インタークーラーを通ることで、これが80度くらいに下がり、異常燃焼がなくなり、ノッキングが起きない」

 --社長の公約を達成できた

 「リッター30キロと29・5キロでは大きな違いがある。その意味では大台に乗せたことで、燃費の良さはアピールできた。だが、開発チームとしては、燃費の良さはデミオの1番目の魅力とは考えていない」

 --というと

 「消費者がマツダのクルマや、デミオに何を求めているかといえば、走りの楽しみだ。走りがよいことが、最優先されなくてはならない。言い方は悪いが、デミオらしい走りを追求しなければ、30キロは特に高いハードルではなかった。今回もデミオらしい走りを求めると、昨年の後半までは27~28キロ程度しか達成できなかった。転がり抵抗が少なく、なおかつ走りにもあうタイヤを見つけ出すなどのさまざまな改良で、30キロを達成した」

 --走りの良さとは

 「『上質な走り』をコンセプトにした。クルマがコーナーを曲がるとき、ブレーキを踏んで減速して、ハンドルを切って、そして戻して、今度はアクセルを踏んで加速する。この一蓮の動きを一体感あるものにしていくことで、走りは格段とスムーズになる。これまでのデミオとの違いは、助手席に乗った人が、『自分にも気遣ってくれるうまい運転だ』と思わせることだ。さらに、空気抵抗を示すCD値も従来の0・32から0・29に引き下げた。全長が短いハッチバック式のコンパクトカーは、空気抵抗は大きくなるが、ボディー下部の形状改良などでクラストップになっている。アクセルを踏み込まなくても、時速100キロ以上の高速域で伸びが発揮できる」

 --これまでマツダが言ってきた「ZoomZoom(ズームズーム)」のコンセプトとは、違った走りになりそうだが

 「確かに、これまでのデミオには“やんちゃ”なところもあった。しかし、今回、目指したのは“人馬一体”だ。スムーズな走りというのは、人の指示が瞬間的に馬に伝わって反応するというよりは、ある種の間があって動きが連動していくものだ。格闘技に例えるなら、『K-1』と合気道の違いだ。K-1は、力任せにクルマを押さえ込むようなものだが、合気道は相手の力を使って、それをいなしていく『しなり』の動きがある。コンパクトカーでは、力任せではなく、しなりを生かす方が、上質な走りに仕上がると考えた」

 --デザインは

 「マツダ車は、フロント周りのデザインが『マツダファミリー』として統一されている。ところが、最量販車種のデミオだけが、違うデザインだった。今回は、これをマツダファミリーの“顔”に仕上げている」

 --ターゲット層は

 「これまで通り20~30歳代の女性がメーンとなることは変わらないが、それだけではなく、60歳以上も大きなターゲットカスタマーとしてとらえている。中型セダンやミニバンからのダウンサイジングニーズも取り込めるとみている」

 --価格は13-スカイアクティブが140万円からだが

 「開発責任者として本音を言えば、145万円とか、もう少し高くてもいいのではと思っている。マーケティング戦略で、かなり低価格になっている」

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