しっかりと、安全性が証明されたのなら、購入したいですけどねー。
福島第1原子力発電所の事故で、福島県の農産物は政府の「出荷制限」や風評被害に悩まされるなど、厳しい状況が続いた。ところがオンライン販売では、被災地を応援しようとの動きから売れ行きは好調だ。
1年前と比べて売り上げが急伸したネット販売も少なくない。だが被災地支援の風潮が一段落した後も勢いを維持できるかがカギだ。
■毎日50~70個の注文、売上高は数百万円
2011年3月21日、福島県を含む4県のホウレンソウとカキナに出荷制限が出されて以降、福島産の野菜はたびたび制限の対象となってきた。6月24日現在で、福島第1原発20キロ圏内の避難区域や計画的避難区域などを除いて野菜の出荷制限は解除されたものの、一部の消費者からは「福島産農産物は大丈夫か」と心配の声が消えない。
だが意外なことに、福島野菜のネット通販は売り上げを伸ばしていた。JA全農福島は、オンラインでコメや牛肉、野菜、果物を販売する。福島第1原発の事故後となる2011年4、5月は、会津産アスパラガスを販売していたが、担当者に聞くとこの2か月だけで「去年1年分の売り上げに相当します」と明かした。全国各地から注文が入り、通常なら品物の到着希望日を入力する「備考欄」には顧客から「がんばってください」などと応援のメッセージが寄せられたという。
JA新ふくしまが運営する通販サイトでも、4月に発売した野菜の詰め合わせセットが「大ヒット」。担当者は「毎日50~70個の注文が入り、それが1か月間続きました」と話す。1年前は数万円の売上高だったが、今年は一気に「数百万円単位」に急上昇した。
2つのケースでは、「福島を応援したいが、地元のスーパーに福島産の野菜が売られていない」という消費者の問い合わせが多かったようだ。購入者は放射性物質に関する懸念は少なかったようで、その理由として「もともと福島県の農家を支援する目的で通販サイトを訪れている人たちなので、品質への不安よりも『応援したい』という思いが強かったのではないか」と、それぞれの通販サイトの担当者は口をそろえる。1度購入した客が「リピーター」となって2度、3度注文してくるケースも少なくない。
■あえて「風評に負けない」と打ち出さない
2010年暮れにスタートした通販サイト「福島フルーツストア」は、福島第1の事故の前と後で客層がすっかり変わってしまった。担当の出口武司氏によると、原発事故を境に、それまでの「お得意様」が一気に離れてしまったが、代わりに新規の顧客が付き、結果的には利用者が増えた。
福島フルーツストアでは、大々的に「風評に負けない」と打ち出さず、極力「通常営業」を心掛けた。「継続して購入してもらうには、『大変だから今買ってください』と強調するより、『これからも品質の高い商品を出します』というメッセージを伝えたかった」と、出口氏は明かす。新規の客は当初「福島応援」という意図が強かったようだが、商品に満足したようでその後も繰り返し購入する人が増え、6月以降も顧客数が伸びているという。
農産物を提供する生産者が自主的に放射性物質の検査をするケースも多く、そのうえで福島フルーツストアでは、安全面をすべてクリアした商品だけを出している。消費者の中には「放射能は問題ないか」と問い合わせてくる人もいたが、その際は安全基準を満たしたとの証明を見せ、それでも納得してもらえなければ、「苦渋の選択でしたが『かえってご迷惑になる』と販売をお断りしました」(出口氏)。
福島の農産物は、夏と秋が「本番」だ。福島フルーツストアでもナシやモモ、リンゴの販売が本格化する。「被災地応援ブーム」がやや一服した感もあるが、出口氏は「例えばツイッターなど、ネットを通じてきめ細かく正しい情報を公表し、農産物の安全性をアピールしていくよう努めたい」と話す。
2011年7月1日金曜日
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