いよいよ、その期限が迫ってきましたね・・・懸命な判断をしてもらいたいものですね。
今週の日本株は、米国の債務上限引き上げ問題次第の状況が続く見通し。まさに今週は、投資家にとって、天国と地獄の分かれ目になる可能性がある。米財務省は、8月2日までに上限が引き上げられないと、新たに資金が調達できなくなり米国はデフォルト(債務不履行)の危機に陥るとしている。なお、上限引き上げに強く反対しているのは、昨秋の選挙で米議会下院に大量当選してきた共和党の「茶会派」の議員だという。
(1)米国の債務上限引き上げを8月2日までに議会が合意できるか否か、(2)その引き上げは一発引き上げか、2段階引き上げか、3段階引き上げなのか等、(3)財政赤字の削減額は一体いくらになるのか、(4)ムーディーズ、フィッチ、S&Pなどの格付け機関による米国債の格下げが実施されるか否か、などに市場は注目している。
なお、上院のリード民主党院内総務が提案した政府債務の法定上限引き上げ法案について、共和党議員43人が反対しているという。上院では現地時間31日未明(日本時間1日午後)に、同法案の審議を打ち切り、採決を行うための投票を行う予定だが、このままだと可決は困難な情勢だと伝わっている。同時に、リード院内総務は反対の意見をくみ取りつつ翻意を促す努力をする姿勢を示したとも。
先行きを読み難くしているのは、期限とされる8月2日に債務上限引き上げの合意がなされなくとも、直ちに米国がデフォルトに陥るわけではないということだ。米財務省は、連邦債務の上限引き上げで議会が合意に達しなかった場合、国債保有者への利払いを優先する方針だからだ。また、同省はデフォルト対策として、債務返済や支払いの優先順位などを示すことを検討しているとみられている。つまり、真のデフォルトのタイムリミットには多少のモラトリアムがあるのだ。
先週半ばまでは、市場は、米議会は米国の信用を貶めるようなことはまずしないだろうという見方が大勢だった。しかし、リーマン・ショック直後の2008年9月29日、米下院本会議が、最大7000億ドルの公的資金で不良資産を買い取る制度を柱とした、金融危機に対応するための緊急経済安定化法案を反対228、賛成205の反対多数で否決した。これを受けNYダウは、急反落し、前週末比777・68ドル安の10365.45ドルで取引を終えた。この米議会の前科が悪夢のように思い出されはじめている。
その後、法案に修正が加えられ、10月3日に、同法案は賛成263、反対171で下院を通過した。当時のブッシュ大統領が同日署名し、緊急経済安定化法(金融安定化法)として成立した。法案の再度の否決は、世界的な金融恐慌をもたらすとの認識が広まり、下院では賛成にまわる議員が続出したという。
繰り返すが、期限とされる8月2日に債務上限引き上げの合意がなされなくとも、直ちに米国がデフォルトに陥るわけではない。しかし、8月2日までに合意ができなければ、世界の金融市場は、前代未聞の事態発生への恐怖から、狼狽する公算が大きい。世界一安全とされた米国債券を我先にと狼狽売りし、基軸通貨のドルも我先にと手放す個人、企業、国家、中央銀行が続出する見通しだ。
米議会の対立は実は茶番で、単なる政治ショーであり、さすがに、土壇場ではデフォルトを回避するだろうというのが先週半ばまでの市場コンセンサスだった。だからこそ、米株は弱いながらも急落(NYダウは29日まで6日続落)せず、日本株も底堅く推移していた。少なくとも、日本株に関しては7月27日までは・・・。
だが、予想と全く逆のことが起これば、当然人間は驚き、落胆し、当惑し、失望し、怒り、動揺し、そして狼狽する。その投資家の狼狽売りが、ドルはもちろん、おそらく金を除く全ての世界の債券、株式の急落に直結することだろう。そして、これをみて、慌てた米議会が、(共和党の茶会派議員はどう思うか分からないが)悔い改めて、デフォルト阻止に動くというお粗末な展開も想定しなくてはならない。
つまり、米議会が08年の愚を繰り返すという最悪シナリオだ。こんなことで、歴史を繰り返して欲しくはないが、残念だがその可能性は否定できない状況とみておく必要がある。
まず、2日までに合意されるケースでの日経平均の想定レンジは9600円~10200円程度。合意確度が高まるニュースフローをきっかけに、ドルが買い戻され、日本株も同様に急反発するだろう。
一方、合意できなかった場合は、どこまで下がり、どこで底を打つかは正直わからない。なぜなら、下がることは予想(覚悟)できるが、一体どこまで下がったら、米議会が悔い改めてデフォルト阻止に動き出すか分からないからだ。議会が事態打開に向けて動き出すニュースフローが出れば、その時点から相場は急速に切り返すだろう。
ただし、市場が混乱してもそれを放置し、完全なデフォルトを起こした場合、ショックのインパクトは、軽く、リーマン・ショックを超えるとみておく必要がある。世界恐慌のトリガーとなるかもしれない。これを茶会派の議員は望むかもしれないが、他の多くの賢明な米議員がそれだけは阻止すると信じたい。
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