そんなに種類があったんあだー、知らなかった!!
会議室の机の上に並べられたカップ麺にお湯を注ぐ。出来上がるまで数分。ふたを開けると、白い湯気とともにスープの香りが立ち込めた。
6月30日。大阪府吹田市のエースコック本社で開かれたご当地カップ麺の試食会。同社の開発担当者だけでなく、ラーメン部員も集まり、用意された博多や熊本、函館など同社製品の4種類を味わった。
「多くの商品があふれ、商品寿命も短くなっている今の時代、新しい企画を始めるにあたって、試食はとても重要なプロセスなんですよ」。麺を取り分けながら商品開発グループの植田浩介さんが説明してくれた。植田さんはご当地カップ麺の開発に携わったことがあり、そのときは4日間で札幌と博多の20店近くをハシゴした経験を持つ。
■競争激しい業界
確かにカップ麺とひとくくりで言っても、これまでに発売された商品を含めるとその数は膨大になる。試食会で出された同社製品を比べてみても、スープの味や麺の種類はともかく、容器や作り方でさえ、どれも異なっていた。それだけ裾野が広いジャンルとも言える。
こんなデータがある。
社団法人日本即席食品工業協会によると昨年度、日本国内で生産されたカップ麺は34億7032万食。全国で発売されたJAS製品の銘柄は1030種類に上り、即席麺全体の66.1%をカップ麺が占めた。
「こんなに競争の激しい業界に素人の自分たちが挑むなんて、ちょっと自信がなくなってきました…」。新入部員の高瀬真由子が不安そうな表情を浮かべ、つぶやいた。
すると、植田さんと同じ商品開発グループの木戸亮介さんが声を張り上げた。「だからこそ、やりがいがあるんです。長く愛される商品を作るのは一筋縄ではいかないけど、新企画の柱となるコンセプト次第では、決して不可能ではありません」
■「甘辛」と「始末」
ではラーメン部が目指す大阪のご当地カップ麺は、どんなコンセプトにすればいいのか。今年1月に完成させた生麺では、大阪人がこよなく愛する「甘辛」と食材を無駄なく使い切る「始末」の精神をコンセプトとして提案し、大阪の食文化を意識したラーメン作りにこだわった。
食いだおれの街・大阪のご当地カップ麺を目指す以上、ラーメン部としても生麺と同じ「甘辛」と「始末」を企画の柱に据えたい-。エースコック側とのこれまでの協議でも、そこは譲らなかったが、カップ麺でそれをどう表現するのか、具体的にはまだ示せていなかった。
しかし、この日の会議で植田さんから一つの提案があった。
「海山素材のうまみを存分に引き出し、大阪の食文化を体感できるような商品を作ることはできるはず。昆布だしというのも大阪らしいアイデアだと思うし、カップ麺を製造する過程で普段は捨てるような原材料を上手に使うことができれば、ラーメン部さんの思いに沿ったカップ麺になるかもしれない」
さすがは商品開発のプロ。植田さんの提案に出席した部員のだれもがうなずいた。完成までの道のりはまだ遠いが、ほんの少し光が見えた気がした。
■木戸亮介(37) 大阪府出身。技術職を経て商品企画担当へ。メタボと戦う2児のパパ
■植田浩介(29) 大阪府出身。営業職を経て商品企画担当へ。ラーメンと酒が主食の独身貴族
【前回までのあらすじ】大阪のご当地ラーメン作りを目指し、産経新聞大阪社会部の記者たちが勢いだけで結成した「大阪ラーメン部」。大阪の食文化に一石を投じようと、生麺作りの枠を超え、即席麺大手「エースコック」との共同開発で年900億食の世界市場のカップ麺業界に挑む。
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