2011年7月13日水曜日

ゼロ金利下で量拡大しても物価上がりにくい=白川日銀総裁

震災からの復興がどうなるか読めないなか、なかなかインフレには誘導しにくいですよね。

 日本銀行の白川方明総裁は13日午後、衆議院財務金融委員会で、早期にデフレから脱却し、物価安定の下での持続的な経済成長が日銀にとって極めて重要とし、デフレ脱却に向けて「日銀として今後も最大限、努力する」と語った。

 ただ、日銀の力だけでは解決できないと述べるとともに、現在のような実質的なゼロ金利の中では、さらに通貨を供給しても「物価は上がりにくい」と指摘。足元で進行している円高に対しては、短期的に日本経済の下押し圧力になると懸念を表明した。 

 <デフレ脱却に全力、日銀だけでは解決できない> 

 白川総裁は、デフレからの脱却が日銀にとっても極めて重要な課題との見解を示す一方、デフレ克服には日本の成長力を上げる必要があるとし、「日本の成長力をしっかり上げる取り組みがないと、日銀の力だけでは解決しない」と指摘。日銀、政府、民間の力を合わせて日本経済を持続的な成長に復帰させることが重要とし、「日銀のできる範囲で、今後も最大限、努力する」と強調した。ただ、民間エコノミストらの予想などを踏まえ、「デフレ期待が定着している状況では、必ずしもない」と語った。 

 <経済・物価弱まればゼロ金利長期化、さらなる量拡大「議論としてはあり得る」> 

 その上で総裁は、デフレ脱却に向け、金融市場への潤沢な資金供給や、リスク性資産も買い入れる資産買入基金の創設、実質ゼロ金利政策に関する時間軸の明確化、成長基盤強化支援オペなどの施策を挙げ、「日銀は自らの目的に対し、責任を持って取り組んでいる」と説明。時間軸の明確化に伴い、「仮に経済・物価が弱くなれば、自動的にゼロ金利政策も長期化する」と語った。物価上昇に向けて、資金供給量をさらに拡大すべきとの指摘に対しては「将来さらに(量を)増やせばどうなるかというのは、議論としてはあり得る」としながら、「ゼロ金利の下で、中央銀行がいくら通貨を供給しても通貨の保有コストもゼロになる。このため、通貨の需要も増えることになり、物価は上がりにくい」と指摘。現在、日銀が採用している「中長期的な物価安定の理解」は、インフレターゲット政策の長所を取り入れ、欠点にも対処できる「枠組み」と述べた。

 円高進行もデフレ圧力を強める要因になるが、白川総裁は、1ドル=80円を割り込んでいる現在の円高について、欧州の金融不安に端を発し、投資家がリスクを回避していることが影響していると説明。円高は「短期的には日本経済に下押し圧力となる」とし、「注意深くみていく」と語った。

 <国債引き受け、財政ファイナンスと見られれば長期金利上昇> 

 復興財源確保に向けて、与野党内から指摘が出ている日銀の国債直接引き受けに対しては「直ちにインフレが起こるわけではない」としたが、「財政ファイナンスと市場に見られれば、将来の不確実性が増し、長期金利が上昇する。もともと順調にいっている国債の発行にも支障が出る」と慎重な議論を求めた。

 白川総裁は委員会の冒頭、「通貨および金融の調節に関する報告書」の概要を説明。日本経済の現状について「震災による供給面の制約が和らぐ中で、持ち直している」とし、先行きは、供給面の制約がさらに和らぐ中で「2011年度後半以降、緩やかな回復経路に復していくと考えられる」との見通しを示した。その上で、金融政策運営について、物価安定が展望できるまで実質的なゼロ金利政策を継続することや、リスク性資産も買い入れる資産買入基金など包括的な金融緩和政策を続けていくと表明。震災の影響はじめ、「必要と判断される場合には、適切な措置を講じていく」と語った。 

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