2011年11月16日水曜日

日銀総裁、日本経済取り巻く環境に警鐘

経済のグローバル化って、いいときはいいけど、いったんどこかが悪くなると歯止めがきかなくなっちゃうねえ。


 日銀が16日の金融政策決定会合で、景気判断を下方修正したのは欧州の債務問題に収束の見通しが立たず、日本の実体経済にも影響が表れてきたためだ。白川方明(まさあき)総裁は16日の会見で欧州の債務問題について「国際金融市場を通じて、世界経済の下ぶれをもたらす可能性がある」と指摘した。歴史的な円高に加え、タイの洪水被害も懸念されるなど日本経済を取り巻く環境は厳しさを増す一方だ。

 白川総裁は欧州危機が今後、日本経済に波及する道筋を3つに整理した。

 一つは欧州向け輸出の減少だ。日本の欧州に対する輸出の比重は大きくないが、欧州向け輸出のウエートが高い新興国経済が減速することを通じて、日本経済が間接的な打撃を受ける可能性が高い。

 深刻なのは金融への影響だ。欧州危機で金融機関が資金調達に不安を持ち、貸し渋りが発生すると、企業は金融機関から資金を借りられず、新たな設備投資ができなくなる。個人消費も落ち込み、経済を冷え込ませる。日本の資金繰りは安定しているものの、白川総裁は「将来、大きな市場の混乱起きると日本も無縁ではない」と強調した。

 また、すでに歴史的な水準にある円高がさらに進行する懸念がある。白川総裁は「(ドルやユーロに対して)相対的に安全資産とされる円が選好させやすく、円高を通じて悪影響を与える」と指摘した。

 白川総裁は景気悪化リスクの一つに米経済の減速長期化を挙げた。

 米国では、2008年のリーマン・ショック以降の住宅バブルの崩壊で、資産価値が下がり、借金が膨らんでしまった。資産と負債のバランスが大きく崩れ、家計は借金返済のため消費を抑制する傾向が強まっている。米国では個人消費がGDPの約7割を占めるだけに大きな影響を与えている。

 資産と負債のバランスシートを正常化する必要があるが、米国の失業率は9%台と高止まりし、借金の返済もままならないのが実情だ。日本も1990年代のバブル崩壊で、金融機関や企業が多額の不良債権の処理に時間を要し、長期の景気低迷から脱することができなかったが、米経済の「日本化」を懸念する声は強い。

 白川総裁は、タイの洪水の影響にも強い懸念を示した。

 タイは、東南アジアの自動車産業で中心的な役割をはたしているほか、ハードディスク駆動装置といったIT関連製品の集積地にもなっている。日本のタイ向け輸出は全体の約4%を占めているが、今回の洪水は日本だけでなく、他の東南アジア諸国にも影響を与えている。

 日本経済への直接的な影響として、白川総裁は、現地の生産施設が被害を受けることで、タイに生産を頼る企業の連結ベースでの業績の悪化を懸念した。タイからの部品調達が滞ったり、タイ向け輸出が減ったりして自動車や電機産業の生産が抑制されかねない。

 一方で、被災した現地工場の復興需要にも言及した。復旧作業の過程で材料、部品、労働力などの受遺用が高まるためで、東日本大震災の復興需要に通じるが、需要の規模は今後の見極めが必要としている。

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