一体どうしたらいいんだろうね。ため息も出ちゃうね。
半導体や電機など、かつて日本経済を牽引(けんいん)した製造業で国内工場の閉鎖や縮小が相次いでいる。円高や海外メーカーの台頭などの理由から収益が圧迫され、経営再建中の半導体大手ルネサスエレクトロニクスとシャープだけでも国内の早期希望退職者数は1万人規模に達する。さらに工場縮小の動きが他の製造業に広がれば、日本経済への打撃はかつてない規模となろう。不安を隠しきれない各地の表情を追った。
「まさかこの歳で就職活動をするとは…」。9月25日、山口県宇部市のアシストハローワーク(臨時就職相談所)を訪れた46歳の男性はため息混じりに話した。
男性は高校を卒業後、NEC山口(現ルネサス)に入社。以来、同社の山口工場(宇部市)一筋で働いてきたが、2013年度に工場が大幅に縮小されることになり、退職を決断した。妻と3人の子供、住宅ローンを抱えての再就職活動。簡単にはいかないと覚悟はしていたものの、男性は「なかなか次の仕事が決まらない」と予想以上の厳しい現実に戸惑う。
ルネサスは経営再建に向け、グループの国内18拠点のうち10工場を3年内に売却または閉鎖する。9月まで募集した早期退職には全従業員の約2割に当たる7511人が応募した。しかし、ハローワーク宇部の勝本由紀雇用指導官は「労働市場は厳しく、新しい雇用は少ない」と話す。展望は容易に開けそうにない。大手企業の工場閉鎖や生産縮小は、部品を納入する中小企業にも影響を与えている。取引量が細り、社員の削減を余儀なくされる企業も少なくない。
「今後は受注がゼロになると覚悟している」。シャープに液晶テレビの部品などを納入する大阪府内の中小企業経営者は、落胆した表情で話す。同社は昨年、シャープの経営悪化に伴い受注が半減。大幅な人員削減に踏み切っただけに、「シャープには何も期待できない」と肩を落とす。シャープは今年度、液晶テレビの販売台数を前年度比35%減の800万台に減らす計画。11月には国内で約2000人の早期退職を募集する。東京商工リサーチによると、国内でシャープグループと直接取引のある企業は2000社以上、総従業員は54万人超。シャープの生産縮小の影響は、こうした企業にも広く及ぶ。
半導体や家電製品をめぐる日本の競争力の低下は、時代の変化を如実に映し出している。製造装置を導入すれば比較的簡単に生産することが可能となる時代が到来し、韓国や中国メーカーが相次ぎ参入した。価格競争が激化したところに円高という逆風が吹き、国内の競争力が低下した。その結果、半導体や電機で国内工場の閉鎖や縮小が進む。政府が7月に決めた「日本再生戦略」では、医療・介護、環境など新しい分野を掘り起こし、20年度までに480万人以上の新たな雇用を生み出す計画だ。だが、雇用の移転は進まない。
パナソニックなど複数の大手企業が撤退した千葉県茂原市。ハローワーク茂原によると、11年11月から12年9月までに合計で1900人の離職者が発生したという。ハローワークには介護などの求人が多く、職業訓練の紹介なども行う。だが「製造ラインで働く人は黙々と作業するのが得意で、介護や営業などには移りたがらない」(ハローワーク茂原の熱田家喜所長)。8月の茂原の有効求人倍率は前月比0.07ポイント低い0.39まで落ち込んだ。
日本総研の山田久チーフエコノミストは「正社員と終身雇用を前提とする日本企業はコストが高い。自動車など他の製造業にも国内生産縮小の動きが広がる懸念もある」と指摘する。製造業という雇用の受け皿を失えば、日本経済への影響は計り知れない。だが、対策は限られているのが現状だ。
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