2012年10月27日土曜日

意外と知らない自販機ビジネス 「おしゃべり機能」で心くすぐる

確かにそういうのは面白いよね。子供は欲しくなるだろうな~。

飲料用自動販売機が肩身の狭い立場に追いやられている。平成23年の普及台数は253万台と前年比2・3%減少したほか、電力不足による節電要請で消灯を余儀なくされるなど、まるで“じゃま者”扱い。そんな逆風下、飲料メーカーが生き残り策の一環として注目しているのが「おしゃべり機能」だ。当初は売り上げにつながらない余分な機能とみられていたが、新たな需要を掘り起こす意外な効果をもたらしている。


 「ぼく、アンパンマン! みんな元気?」 明治(東京都)がテーマパークや商業施設で展開する「アンパンマン自動販売機」。売れ筋の紙パック飲料などを販売しており、自販機に近づくと、人感センサーが反応し、おなじみのテーマ曲とともに、女優の戸田恵子さんによるアンパンマンの元気な声が流れ出す。この大好きな声を聞いた子供たちは、両親に飲み物をねだり、記念撮影してもらうようせがむ。

 昨年9月に初代機種1500台が設置され、今年10月からはアンパンマンをはじめ、ジャムおじさんやドキンちゃんなどが自販機の正面や側面に描かれた新デザインの2代目が順次設置されている。玩具メーカー大手、バンダイの調査によると、アンパンマンは0~12歳の子供たちの「好きなキャラクターランキング」で10年連続で1位に輝く超人気者。それだけに「売り上げは一般の自販機の1・5倍」(明治の担当者)という。明治が人気キャラクターのアンパンマンを自販機に採用した背景には、売り上げ拡大とともに、自販機市場を活性化させたいという狙いがある。

 そもそも自販機は、私たちの生活に溶け込んでいるものの、知られていないことも意外と多い。例えば、設置場所。飲料メーカーや飲料の詰め替え業者の営業活動で設置してもらうケースと、逆に店舗などに「設置してくれ」と要望をうけるケースの両方があり、双方の話し合いで決定する。場所が決まっても、売り上げが悪ければ、飲料メーカーは移動を検討する。ただ、メーカーが撤去や移動を希望しても、設置している店舗などが望まないのなら当然、勝手に移動することはできないという。

 もうひとつ気になるのは自販機の設置場所を提供した店舗、地主の取り分(収益)。設置する際の「場所代」「家賃」が支払われるケースはあまりなく、飲料が売れれば、1本あたり設定された割合が店舗や地主に支払われる仕組み。取り分比率は飲料メーカー、飲料の価格、立地条件などによってさまざまだが、関係者は「10~20%が多いのではないでしょうか」と推測する。こんな条件の下で全国各地に設置されてきた飲料用自販機だが、市場は飽和状態となりつつある。

 日本自動販売機工業会のデータによると、平成23年の飲料自販機の普及台数は前年比2・3%減の253万台、売り上げは4・5%減の2兆2552億円。東日本大震災後の電力不足で、東北地方で自販機の撤去が相次いだほか、照明を夜間も消灯したため、認知度が低下したのが響いた。

 こうした事態に、明治だけでなく、自販機が商品販売チャネルの約9割を占めるダイドードリンコ(大阪市)も「おしゃべり機能」を武器に、需要の回復につとめている。同社は平成12年から、日本語、英語、ポルトガル語、中国語の4言語のほか、関西弁など方言に対応した「おしゃべり自販機」を展開してきたが、震災から1年を経過した今年3月から盛岡弁、仙台弁、福島弁のバリエーションも追加。被災地を元気づけるとともに、消費者を逃さないよう躍起になっている。

 実は、おしゃべり自販機を約30年前に業界で初めて設置したといわれるのがダイドードリンコ。当時は「うるさいと指摘されたり、気味悪がられたりした」(広報担当)ため、定着はしなかったという。しかし、現在は音声技術が進化し、プロの声優や著名人の表情豊かな声も収録し、消費者にも親しまれるようになっている。

 キリンビバレッジ(東京都)も平成22年から、名古屋開府400年祭を記念し、名古屋市の河村たかし市長、タレントの矢野きよ実さんが名古屋弁で「今日もええ日にしてちょうよ!」などと話しかける自販機を、名古屋城内や名鉄レジャックなどに約40台設置している。

 現在は矢野さんの声しか聞けないが、同社の担当者は「ラッピングもして目立つこともあり、売り上げアップに貢献している」と満足そうな表情をみせる。販売拠点になるだけでなく、「おしゃべり機能」でセールスマンとしても存在感を発揮する自販機。今後は誰の、どんな言葉が聞こえるのか楽しみだ。

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