2012年10月5日金曜日

「カネのためなら何でもやる」――中国人がアフリカで嫌われている

恐ろしい・・・日本もそうならないために誇りをもって頑張ることを忘れないようにしないとだね。

伊吹太歩の世界の歩き方:
 尖閣諸島の国有化にからんで、日中関係についてさまざまな議論が起こった。海外の有力メディアでも、例えば米ニューヨークタイムズの元東京支局長だったニコラス・クリストフが、尖閣諸島の所有権は「中国の主張を支持する」として、台湾・国立政治大学の研究員である邵漢儀の記事を紹介している。この研究員は2012年5月にも米ウォールストリートジャーナルに同様の主張を「投稿」していた。



 残念なのは、日本の学者による反論があまり海外で紹介されないこと。クリストフにしても、ニューヨークタイムズが掲載した記事の序文で、日本の学者に根拠ある反論をしてほしいと呼びかけている。日本の学者もウォールストリートジャーナルに投稿するなり、クリストフに反論を示すなりするべきだろう。

●「中国人はカネのためなら何でもやるからな」

 そもそも中国が尖閣諸島にこだわる理由が、その近海にある天然資源であることはもはや説明するまでもない。とにかくエネルギーを求める中国は世界中で資源確保に手を広げている。ただその必死さと、なりふり構わずの姿勢が顰蹙(ひんしゅく)を買うことは少なくない。

 経済成長の著しい中国はカネの詰まったカバンを手に、天然資源の確保や内需市場を狙って世界に進出してきた。最近、軍事政権から民政に移管し、経済開放政策で「最後のフロンティア」と呼ばれるミャンマーにも、軍政時代の「鎖国状態」の中で中国が経済的に深く入り込んでいた。ただし中国のやり方には、多くのミャンマー人が辟易(へきえき)している。知人のミャンマー人は「中国人はカネのためなら何でもやるからな」と嫌悪感を隠さない。

 最近、ニュースを見ていると、あちこちで「シノフォビア(Sinophobia)」という英語の言葉をよく目にするようになった。シノフォビアとは簡単に言えば「Sino=中国」「Phobia=嫌悪」で「中国嫌悪」という意味で使われている。そもそもは世界に進出する中国人や中国文化に対する嫌悪感を表現する言葉だ。前出のミャンマー人も中国に対してシノフォビアを感じている。

●「不公平な競争」にアフリカでも中国嫌悪が広がる

 最近シノフォビアが急激に広がっているのがアフリカだ。アフリカでは、世界的に見ても中国による進出が顕著で、中国はすさまじい勢いで入り込んできた。欧米の経済専門家の中には、中国のアフリカでのこうした動きを「新植民地主義」のやり方だと非難する者も多いが、貧しいアフリカ諸国はカネを落としてくれる中国を良きパートナーだと受け入れてきた。でも結局、中国人に対する反発がどんどん高まっており、アフリカ各国の政府が頭を抱える事態も頻発している。

 アフリカ中部ザンビアで2012年8月、中国人が経営する炭鉱で事件が発生した。労働環境や賃金の改善を求めた労働者による抗議が、暴動に発展したのだ。この暴動で、50歳の中国人監督者が労働者の運転するトラックでひき殺された。別の中国人監督者も病院に運ばれたが、一命を取り留めた。

 2011年11月には、南アフリカの北西州で中国人の経営するスーパーが何者かに放火され、中国人4人が死亡する事件が発生。西アフリカのセネガルや東アフリカのケニアでも、中国による投資に便乗する中国人ビジネスマンらによる「不公平な競争」に地元ビジネスマンが排斥運動を行っている。中国との250億円規模の貿易によって、チャイナタウンがすでに存在するアフリカ南西部アンゴラでは最近、中国人ギャング37人が誘拐、殺人、売春などを行っていたとして逮捕され、中国に強制送還された。

●中国人に奴隷のように扱われるガーナ人

 特に大変な状況になっているのが、西アフリカのガーナだ。2012年8月、ガーナ中国友好連合(GCFU)が、中国が絡む鉱業でガーナ人と中国人の関係が悪化していることに懸念を発表、政府に介入するよう求めた。GCFUによれば、ガーナの若者などがこれまでに鉱業分野で働く87人以上の中国人を銃殺している。

 最近になって、中国人側も武装を始めたことで危険度はさらに高まりそうだ。ガーナにはガラムゼイと呼ばれる金鉱採掘者がいるのだが、最近になって中国人も金鉱採掘を行うようになり、この分野でも中国人とガーナ人の間で緊張が高まっている。

 政府の介入を求めるGCFUの発表後も、混乱は一向に収まっていない。アシャンティ州では8月16日、ガーナ人が中国人に対する抗議デモを敢行。これに対して、中国人はガーナ人に向けて30分にわたり威嚇発砲を行い、ガーナ人が応戦する事態が発生した。

 現地のニュースには、ショットガンを手にした中国人2人が周囲を警戒する写真が掲載されている。そして火に油を注いだのが、その後の警察による捜査で中国人の中に9人の不法労働者がいたこと。9人は逮捕されるに至ったが、緊張関係はさらに高まる可能性がある(ちなみにケニアなど他のアフリカ諸国でも中国人が観光ビザで入国して商売を行っているとの問題が出ている)。

 地元メディアなどによれば、中国人はガーナ人を奴隷のように扱っているという。これについてGCFUは否定をしているが、ダム工事や鉱山などでタダ同然で働かされている人たちが多くいるのはよく知られた話だ。さらに森林伐採なども各地で行われており、伐採された木材の70%は中国に行き着くという。こうした状況がアフリカ中で起きており、その不満が各地で噴出し始めているのだ。

●中国との貿易で国内産業が育たない

 アフリカ南東部のマラウィでも反中感情が国内に広がっている。マラウィの法律では、外国の小売業者はマラウィ国内の3つの都市でしかビジネスが出来ないと規定されている。にも関わらず、中国による莫大な投資を背景に、中国企業は好き放題に各地で商売を行い、政府もそれに目をつぶってきた。それに対するマラウィ人の怒りが6月、最高潮に達し、デモが繰り広げられた。

 こうしたアフリカでの反中意識の背景にあるのは、中国からの輸出。例えばアフリカ諸国では中国に天然資源などを輸出しているが、逆に衣料品や電化製品などの安価な商品を中国から輸入する。そのせいで、国内の産業が成長しない状況が生まれているのだ。

 つまり、仕事を奪われる人たちが出ているのだ。例えば南アフリカでは、ここ10年で8万ほどの製造業の雇用が、安価な中国製品によって奪われた。こうした輸入は年々増加しており、近い将来には、アフリカ人と中国人の大規模な衝突が起きる可能性もある。2012年7月に北京で行われた中国アフリカフォーラムで、南アのジャコブ・ズマ大統領が、「この貿易パターンは、長期的には維持できない」と断言している。

 これまでになく世界での影響力が高くなった中国。経済成長により強気の姿勢はさらに強くなり、尖閣問題でも大胆に対応している気がしてならない。もちろん日本が完全に手玉に取られているとの見方も否定はできないが。

 そうした強気に出る中国の対外政策に、恐怖心や不快感を示す形で、日本、アメリカ、欧州、東南アジア、アフリカでシノフォビアは広がっている。ミャンマー人の言葉を借りるなら、中国が自らの利害のために「何でもやる」限り、シノフォビアはどんどん強くなることだろう。

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