2012年1月21日土曜日

工場の廃熱で発電 中小企業の省エネに貢献

こういったのがどんどん実用化されれば、まさに資源の有効利用ですよね。いい方向で技術革新が進むことを期待しましょう!


工場から排出される未利用エネルギーを有効活用できれば、省エネや電力不足に対応できるだけでなく、二酸化炭素(CO2)排出も削減でき地球温暖化対策ともなる。それを実現するため、神戸製鋼所は主力の空気圧縮機(コンプレッサー)の技術を活用し、これまで廃棄していた排出蒸気を活用した小型発電機などを開発、販売攻勢をかけている。特に、省エネ対応が遅れている中小製造業の工場での導入を見込んでおり、同社は新たな省エネビジネスとして育成する方針だ。

 原油などから不純物を取り除く工程などでは高圧ガスが欠かせず、その工程に不可欠な大型空気圧縮機は石油化学工場や天然ガスプラントの心臓部に位置づけられている。スクリューを使って空気を圧縮する神鋼の圧縮機は、この分野で世界シェアの3割を握る。

 同社のスクリュー式圧縮機は、「主流のタービン式と比べ狭いスペースでも設置が可能」(同社)で、この特徴を生かし小型化機種の開発などを進めている。圧縮機の核となるスクリュー式ローターは2本を組み合わせ、蒸気を送り込んで圧縮する仕組み。

 東日本大震災を機に、節電や省エネ需要が高まる中、同社は2011年8月、これまで廃棄していた蒸気にも対応できる小型蒸気圧縮機と発電機の発売にこぎつけた。

 圧縮機は、生産プロセスで使用し圧力が低下した蒸気を昇圧しリサイクルする。このためボイラーで蒸気を作るよりも燃料費を75%削減でき、年間2300万円のコストダウン、CO2も年間983トン削減できる見通しだ。

 発電機は、スクリューの回転を利用すれば蒸気タービンのように発電できる機能を利用した。しかも、インバーターで回転数を制御することで蒸気量に柔軟に変更し、発電効率を向上できる。発電機のサイズは幅2.6メートル、奥行き1.3メートル、高さ2メートルとコンパクトにまとめ、最大出力160キロワット。年間435トンのCO2を削減できるとしている。

 同年12月にはさらに小規模な蒸気にも対応できる圧縮機を発売するなどラインアップ拡充を進める。これら製品の売り込み先として見込むのは中小製造業だ。中小の工場では蒸気発生量が少なく、再利用が難しいため、蒸気はそのまま大気中に放出されるなど活用されていないケースが多い。

 例えば食品工場の場合、加熱、乾燥、殺菌などの工程で蒸気が使用されている。工程後に圧力が低下した蒸気は再利用されないと熱エネルギーが奪われ、高温水に変わるが、小型圧縮機を使えば蒸気を再び昇圧、工程に再投入して大幅な省エネにつなげる。

 神鋼は圧縮機技術を応用し、新エネルギーにも参入した。昨年10月に発売した低温地熱発電システム「マイクロバイナリー」がそれで、水よりも沸点が低い代替フロンを加熱し、その蒸気でスクリューを回し発電する。70~95度の温水に対応可能で、最大70キロワット。工場廃熱の利用だけでなく、温泉旅館向けにも売り込む。発電コストは「1キロワット時当たり10円を切る見込み」で、火力発電を下回るという。再生可能エネルギーの買い取り制度導入を追い風に、15年度をめどに30億円の売り上げを目指す。

 神鋼は大規模工場から中小企業の製造現場まで幅広い業種で省エネ技術を展開する。小型圧縮機や発電機は現在は国内市場が中心だが、将来的には「輸出も検討する」(同社)としている。

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