すべて、吐き出してもらわないと!
東京電力<9501.T>は20日、2011年3月期の連結当期損益は1兆2473億円の赤字と発表した。福島第1原子力発電所の事故収束と廃止費用を含め1兆0204億円を特別損失に計上したことで金融機関を除く日本企業で史上最大の赤字を出した。 清水正孝社長は記者会見で「原子力安全の信頼を損ねた責任をとる」と述べ、引責辞任することを表明。後任には西沢俊夫常務が6月末に昇格し、勝俣恒久会長が留任する首脳人事を併せて発表した。
次期社長の西沢常務を選んだ理由について清水社長は、「粘り強く、信念を持って取り組んでいることを認識している。大変難しい課題に立ち向かうには適任だと判断した」と説明。今後は政府の支援を受け原発事故の賠償に当たることになる次期社長を内部から起用することについては、「様々な経験、知見を重視した」(清水社長)としている。同席した西沢常務は、「創業以来の未曽有の危機にある中で、責任の重さを感じるが、天命と思い引き受けた」と語った。6月28日予定の株主総会を経て正式決定する。清水社長のほか、原子力部門トップの武藤栄副社長、藤原万喜夫副社長も退任する。
<資産売却6000億円、KDDI<9433.T>株も対象に>
12年3月期の業績予想については、今後の需給動向を見極めることが困難として公表を見送った。配当は見送る。事故収束の費用や原発避難者などへの補償、電力の安定供給確保など今後の莫大なコスト負担に対応するため、有価証券や不動産など資産売却で6000億円以上を確保する一方、投資の抑制や修繕費・研究開発・人件費の抑制などで5000億円以上の費用を削減する。「電気事業に必要不可欠な資産・組織体制に絞る抜本的合理化を進める」(清水社長)としており、会見で具体的な言及はなかったが、約8%出資するKDDIの株式も売却対象となるのは確実。人員の削減も検討する方針で、詳細は年内に取りまとめる。
<低利融資を要請、事故関連費用増大も>
東電は福島第1原発の1─4号機は廃止し、7・8号機の増設計画は中止することも決めた。福島第1原発の5・6号機と、第2原発について、当面は冷温停止状態を維持するための措置を講じる。11年3月期に震災関連で計上した特損1兆0204億円のうち、1)原発事故収束に向けた費用で4262億円、2)1─4号機の廃炉費用で2070億円、3)第1原発5・6号機と福島第2原発の冷温停止状態の維持費用で2118億円などとしている。これらの費用計上について武井優副社長は、「汚染水処理の問題も含めて最大限見積もって算入している。(追加で)変動する部分があれば認識しないといけない」と述べ、今後、事故関連費用が膨らむ可能性を示唆した。同社の主力の資金調達手段だった社債の発行再開については、「11年度は事実上、社債市場を利用するのは難しいと考えている」(武井副社長)としている。
11年3月期は、今後の安定的な利益計上が見込めなくなったことで、繰り延べ税金資産の取り崩しなどに伴う法人税4784億円を計上したことも赤字拡大要因となった。政府が賠償支援の条件として提示した金融機関からの協力について清水社長は、「できるだけ低い利息での融資をお願いしたい」と述べた。西沢常務は、電気料金の値上げについて、「徹底的にコストを削減していく。いまは一切考えていない」と強調した。福島第1と第2原発が稼働しないことで代替する火力発電の追加燃料費は年間で7000億円に上る見込みだ。
<市場は政府の支援姿勢を注視>
マネックス証券のチーフ・ストラテジスト、広木隆氏は東電の決算について「数値自体にはサプライズはない。もはや東電は業績うんぬんで取り扱う銘柄ではなくなっており、決算発表によって投資判断を下すことはナンセンスだろう」と述べた。同社の株価は原発事故の影響で売り込まれ、震災が発生した3月11日の終値2121円に対し、約83%安の367円(20日終値)近辺で推移している。
広木氏によると今後の焦点は「東電支援に関する政府の姿勢」。枝野幸男官房長官が13日に東電向け融資で金融機関の債権放棄を促す発言をした一方、与謝野馨経済財政担当相が20日に東電向け融資の債権放棄について「貸し手責任が発生するのは理論上あり得ない」と述べるなど、現状は政府内で異なる意見が出ている。広木氏は「東電株はすでに投機対象であり、理論的な判断がしづらいなかで、政府サイドの動向が東電株価の動向を決めるだろう」とみている。
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