2012年8月19日日曜日

サントリー「オランジーナ」日本上陸作戦 チームワークで大ヒット導く

このリチャード・ギアのCM可愛いよねー。美味しいし、つい買っちゃうわ~。

サントリー食品インターナショナルが販売するフランス生まれの炭酸飲料「オランジーナ」が、清涼飲料の新商品としては異例の快進撃を続けている。


 当初予定していた年間200万ケースの目標をわずか1カ月で達成し、3カ月後には倍の400万ケースを突破、販売計画は当初の4倍となる800万ケースに積み上がった。1千種類の新商品が生まれても1年後に残るのはわずか数種類といわれるほど競争が厳しい国内飲料市場を席巻するオランジーナのヒットの裏には、部門の壁を越えて社員が一丸となって展開した強力なマーケティング戦略があった。

 平成22年9月。当時入社2年目だった久米さやかさんが、オランジーナプロジェクトに参加した。「メーカーに就職したからには、一度は新商品の企画・開発に関わりたい」と志願し、任された仕事が、オランジーナの日本上陸を成功させることだった。

 サントリーホールディングスは21年11月、オランジーナを販売していた仏大手飲料メーカー「オランジーナ」を買収した。オランジーナ社は、欧州を中心に、炭酸飲料「シュウェップス」などのブランドで知られ、清涼飲料市場(水を除く)で米コカ・コーラに次ぐ2位。サントリーの海外事業強化を象徴する買収として業界で話題を集めた。

 オランジーナの日本市場での売れ行きは、今後予想されるアジアなど他国への展開の成否を占うだけに、食品事業部のチームが背負った重圧は大きかった。久米さんは「苦労は数え切れないほどあった」と振り返る。まず、直面した課題は「ブランドイメージを崩さずに日本でヒットさせるにはどうすればいいのか」ということだ。欧州仕様のまま日本で販売してもうまくいかない。市場の違いをフランスの担当者にわかりやすく説明し、粘り強く理解を得る努力を心がけた。

 具体的な問題として浮上したのは、飲料の容器をどうするかだった。フランスでは、カフェなどで飲まれるガラスのビンが象徴的なのに対し、日本は店頭販売を念頭に置いていたためペットボトルと缶の使用が想定された。そこで考え出されたのが「ビンをモチーフに丸みを帯びた独自のペットボトル」の開発だ。

 さらに、「表面にでこぼこをつけること」でビンに近い感触を持たせた。フランス発の国民的飲料がやってきたという印象を強く打ち出すためにラベルに国旗をプリントするといった工夫も凝らした。

 サントリーが得意とするCM戦略も見事に的中した。このテレビコマーシャルは、フランスの国民的飲料のイメージを生かすために、日本の国民的映画である「男はつらいよ」をモチーフにして制作した。寅さんの格好をしたフランス人「TORA」を、ハリウッド俳優のリチャード・ギアさんが演じる。

 久米さんの上司で同事業部課長の高木祐美さんは、オランジーナの成功の理由について、「久米さんのオランジーナへの強い思い入れが、他部門にも伝わり、社員が一丸となったため」と話す。情熱を持った若い女子社員を、先輩社員たちがサポートする、というチームワークが開花した形だ。

 同社には、昭和56年の発売以来のロングセラー商品「サントリーウーロン茶」や発売9年目の緑茶「伊右衛門」など多くの有名ブランドがある。今後の課題は、ヒットを一過性にせず、オランジーナを主力ブランドに育て上げることだ。

 しかし、炭酸飲料は日常的に飲まれる水やお茶、缶コーヒーなどに比べて、消費者の購買行動は移ろいやすく、ヒットを持続させるのはより難しい。日本の飲料業界は、消費者の健康志向が強いミネラルウオーターやお茶の販売が伸びる一方、炭酸飲料などの嗜好(しこう)品は有名ブランドとして確立されている商品が強い傾向もある。価格競争や過度な販売促進キャンペーンなどに頼らず、ブランド力で販売を安定させることはそう簡単ではない。

 高木さんらは「オランジーナにしかない価値を、ぶれずに徹底的に考えたい」とブランド育成に意欲を見せる。創業者の鳥井信治郎氏がことあるごとに口にしたという「やってみなはれ」のチャレンジ精神を旗印に成長してきたサントリーグループ。海外ブランドのオランジーナを日本で成功させた開発チームの新たな挑戦も、その力強い言葉に後押しされている。

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