2011年12月18日日曜日

「昇り龍景気」は期待できるか 増税と歳出カットでは縮小均衡

本当に、今年は大荒れでしたね・・・来年は、少しでもいい話題であふれるといいですね。


大荒れの卯年が暮れようとしている。「荒れる寅年」とはよく言われるが、どうやら1年遅れたらしい。特に経済分野は波瀾万丈。「天災」と「凋落(ちょうらく)」がキーワードとなった。辰年は株価が天井をつけることが多く、過去60年間の株価騰落率でも断トツだ。来年は震災復興の本格化という下支え材料がある一方で、海外経済の低迷が長引く可能性が高い。「一本調子の昇り龍」は期待できるのか。

 ◆「天災」と「凋落」の年

 平成23年の産業界は「天災」に翻弄された。3月の東日本大震災、7月の新潟・福島豪雨、9月の紀伊半島豪雨、10月のタイ洪水など自然災害が断続的に発生。生産設備が被害を受け、サプライチェーンが断絶。世界中に生産停滞をもたらした。

 また、計画停電や37年ぶりの電力使用制限令で電力不足が現実になった。脱原発運動も広がり原発の全停止が視野に入る。

 こうした事態を受けて企業は、コスト削減のために追求してきたサプライチェーン・マネジメントの見直しや電源確保など、事業継続のための検討を始めた。

 原材料や部品調達先の分散化、適正在庫の見直しに着手。電力安定確保のため自家発電設備や無停電電源装置などの増強も検討されている。円高に苦しむ企業に新たなコスト要因だ。

 一方、「凋落」では日欧米の経済的地位の低下が目立った。日本国債が約9年ぶりに格下げされ、国内総生産(GDP)で中国に抜かれ世界第3位となった。すでに家電製品の純輸入国となり、貿易収支も赤字月が増えてきた。

 欧米では、リーマン・ショックに伴う景気悪化から抜け出すために投じた巨費が国家財政を圧迫。米国債は初の格下げに直面し、失業、住宅価格下落などの多くの問題が噴き出した。輸出拡大で突破口を開こうとしており、今後、各国との交渉が先鋭化するとみられる。

 欧州でも国債の格下げが相次ぎ、国と金融機関の信用収縮が悪循環をたどる。

 戦後最高値を更新した円高や、自由貿易協定(FTA)や環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)など貿易自由化の枠組みの多様化も、こうした変化がもたらした。

 ◆問題は増えている

 新年を迎えるにあたり、こうした負の連鎖をリセットしたいところだが、「凋落」の原因は残ったままだ。

 代表は「企業の6重苦」といわれる問題だ。電力不足は悪化の一途だ。政府がいったん止めた原発の再稼働を決めない限り、5月には稼働原発はゼロになる。東京電力管内に限らず関西電力管内でも電力不足が表面化する。

 円高の大幅改善も難しい。米国の景気失速懸念はやわらいでいるが、財政支出削減が不可避となった。11月には大統領選が控え、雇用改善は最重点課題だ。輸出振興につながるドル安を歓迎する空気は変わりようがなく、円相場の急騰が止まれば、それだけで御の字だろう。

 このほか、労働者派遣問題は先送り、TPP交渉参加は決まったが、関税格差は当面、現状のままだ。法人税引き下げも事実上凍結された。

 また、地球温暖化ガス削減については、京都議定書延長に伴う削減義務からは抜けることを宣言したが、削減努力は継続する。環境税とともに重圧になる可能性がある。

 このほか、16年以上も続いているデフレも出口は見えない。人口が減少し、需要が減るという構図はすぐには変えようがない。団塊世代の退職が本格化する今後は労働力人口も減少する。デフレは進みやすくなる。さらに、資源価格の高騰で原料価格が数倍以上になったにもかかわらず、製品価格はほぼ横ばいか下落という状況が加速している。企業の利益率の下落要因は増える一方だ。

 ◆損して得取れの精神

 企業への逆風は残っているどころか、増えている。

 内需が減退するなか、頼みの綱は輸出だが、欧州危機は予断を許さない状況だ。緊縮財政と信用収縮による景気低迷の長期化は必至。中国経済も欧州の不況を背景に変調をきたしており、成長の鈍化が始まっている。米景気もまだ、病み上がりの状態だ。

 こうした中、日本は財政再建と社会保障維持を目標に、増税と歳出カットに踏み切るが、これでは企業も消費者も元気が出ない。縮小均衡に陥る。

 必要なのは成長による税収増だ。「損して得取れ」の精神で、政府は企業活動を支援する政策を立案・実行していただきたい。できないのであれば、少なくとも邪魔はしないでもらいたい。

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