2011年12月13日火曜日

“全録”時代到来で見えてくる新しいテレビの遊び方、使い方【前編】

「あー、あの番組見逃したー」とか思うのも醍醐味だと思うけど・・・。そんなんでテレビ離れが改善できるのかね?




年末が近づくと気になってくるのが、テレビ視聴。7月の地デジ化移行後、初の年末ということで、恒例の大型番組や新春特番に変化がないか大いに気になる。震災や原発事故、海外でも大事が多かった今年だけに、総括番組も多そうなので、大量録画の準備もしたい。



 そんなこの冬のトレンドが“番組全部録画“すなわち“全録”だ。1週間分の放送をすべて録画する多チャンネル録画機が、続々と登場してきたのである。視聴者にとっては、週間単位で編成される番組ローテーションが、一週間分“全録”されるのが最大の利点。「日経トレンディ」恒例の2012年ヒット予測ランキングでも5位に入るなど、ようやく本格的なまるごと録画時代が到来したといえる。

 過去には考えられなかったこうした贅沢な全録は、テラバイト級の大容量HDDが普及して実現したもの。しかし大容量といっても、やはり限界はある。過去のHDDレコーダーでは容量いっぱいになると「HDDがいっぱいになりました」と停止したりエラーになったが、多チャンネル録画機の場合、一時保管してある番組に新しい番組を上書きする仕組みが基本だ。

 では現状、どのくらいの日数を“全録”できるのだろうか。これまでにも、3チャンネル+スカパー!  HDといった複数チャンネルの録画ができる機種があったが、週間単位の録画となると、12月中旬発売予定の『レグザブルーレイ』(東芝)が、6チャンネル 分の地デジ放送を保管する 「タイムシフトマシン」を搭載し、15日分視聴可能な「レグザサーバー DBR-M190」と、8日分視聴可能なレグザブルーレイ「DBR- M180」の2機種がある。また、『SPIDERPRO』(PTP)は、昨年、番組メタデータで検索できる1週間まるごと録画が話題となったプロユースのもので、年末には地デジに対応した一般家庭用機種 が発売となっている。

 一方で機能を絞り込み、シンプル操作で8チャンネル×8日分を実現したのがBUFFALOの『らくらくTVレコーダー ゼン録』「DVR-Z8」。多機能とは真逆の「まるっと全録機能」に特化し、簡単・単機能がコンセプト。内蔵HDDに保存用の領域を確保し、USB接続で外付けHDDにダビングもできる。かつてのビデオデッキのようなわかりやすさで、ライトな層から、テレビマニアのサブ機器としても魅力的だ。

 画質によってデータ量が増減することから、保管期間と画質はバーター関係となる。長期間では低画質となるので、実際に見て確認する必要があるだろう。保管期間と録画チャンネル数も同様にバーター関係を持つ。例えば、昨年発売のレグザ液晶テレビ『CELLレグザ』なども複数チャンネルの同 時録画が可能だが、同時録画の保管は2つのチャンネルの場合、各約102時間、8チャンネルの場合は、約1日(約25時間)で上書きされる。

視聴スタイルそのものが大きく変化する

 こうした“全録”の機器では複数のチャンネルの全部の番組が自動的に録画される。そのため、好きな番組を好きな時に視聴できるだけでなく、視聴スタイルそのものが大きく変化することが考えられる。現状では、機種によってできることやスペックは異なるが、共通してこれまでの録画と大きく異なると考えられるのが、以下の4点だ。

1、録画予約が必要ない。2、録り逃しがなくなる。3、帰宅後の行動が変わる。4、土日などに、テレビを囲んで、家族の団欒が戻ってくる。 設定したチャンネル全部の番組が自動的に保管されるため、面倒だった録画予約が必要なくなる。毎日、番組表をチェックし、こまめに予約し、さらに録画されたものを編集して保存するといったさまざまな手間から、開放されるのだ。

 はたしてそれがどんな意味を持つのか、次のページでもう少し具体的に考えてみよう。

 “全録”生活は、すべての番組が録画されているため、1日のテレビとの関わり方が変化する。一番大きいのは、帰宅後、疲れた体にムチうって、深夜のリビングで録画を整理しながら翌日の予約録画に苦労していた生活とオサラバできること。気楽に遡って再生しながら、ニュースやワイドショーで今日の出来事をおさらいし、上司や取引先から聞いたニュースの話題や、明日、活用できそうなネタだけをザッとチェック。整理や保存は、週末にまとめてできるので、帰宅後の時間に余裕が生まれる。

 残したい番組は一時保管された中から選び、外付けHDDやディスクにダビングしたり、別領域にコピーするだけ。「とりあえず録画したけれど」見る時間がなかったり、判断できずに溜まってしまった無駄な録画も減る。

 こうした番組のダビングは、無理にその日のうちにやる必要はない。家族それぞれの好きな番組も残してあげたいもの。日曜の夕方、家族みんなが 揃ってテレビを囲み、どれをダビングするか相談したり、好きな番組を語り合うといった、団らんの時間も戻ってくる。

家族のコミュニケーションも増えた

  では、実際に視聴スタイルがどう変化するのだろうか。一週間の“全録”生活を体験してみた。

 我が家は、ダンナ氏と中学三年生の娘、そして私の3人家族。テレビ録画は、映画やドラマ好きなダンナ氏がもっぱら担当だ。今期の彼のお気に入りドラマは、NHK朝の連ドラ『カーネーション』と『家政婦のミタ』、それにクドカンの『11人もいる! 』だとか。ドラマの録画だけでなく、好きなタレントが出演しているCMを細かく編集してベスト集を作ったり、お笑い番組の芸人ごとにネタを保存するといったマメな使い方をする人で、毎日、無我の境地でリモコンを握りしめ、録画予約と整理に余念がない。娘と私はそうした作業を邪魔しないよう、謙虚に見たいアニメや映画をリクエストして録画してもらっている。

 今回のテストでは『らくらくTVレコーダー ゼン録』「DVR-Z8」を使ってみた。2TBのハードディスクと8枚のB-CASカードを搭載したこの機種で、8日間×8チャンネルの番組をまるごと録画した。リモコンで番組表を表示すると、各局、同時刻の番組に、全部、録画マークがついていく。この番組表からすぐ再生できるのがたいへん便利。しかも、左上には、視聴中の番組のサムネイル画像が表示され続けているので、見ながら操作して、番組表で見つけた別の番組にジャンプするといったことも簡単だ。タイムシフトとザッピングのあわせ技が直感的なので、録画機器のメニューから再生したり戻ったりするのが苦手な人も、苦労しないで使いこなせる。

 残したい番組は、内蔵ハードディスクの専用領域か、USB用外付けハードディスクにダビングする。DVDで焼くことを思い切ってやめたのが潔い。家庭での視聴が主なら、外付けハードディスクにダビングできれば困ることはなさそうだ。

 余裕のある日曜日には、一週間分の番組を一気見。タイムシフト&ザッピングのあわせ技でサクサクいろいろな番組が視聴できる。数日前の番組を再生しながら、その時間帯で別の番組をザッピングしていると、まるでタイムスリップしたみたいな気分も味わえる。

 ダンナ氏は、テレビ担当として「もう僕、必要ないじゃん」と、リモコンを握りしめる日々から開放された。娘は学校から帰宅すると、クラスで聞いたテレビの話題を確認。友達との会話にあわせられると喜んでいる。録画がバッティングしていてもギスギスすることもなくなったし、クイズ番組にみんなで挑戦したり、自分の好きな番組を見せあいっこするなど、家族のコミュニケーションまで増えた気がするのが、全録のすごさ、かもしれない。

使ってみて初めてわかった“全録”生活の遊び方・楽しみ方10

 体験から見えてきた視聴スタイルの変化を10の項目でまとめてみた。今回は「前編」として、そのうちの3つを紹介する。

(1)朝が変わる「朝の連ドラ、交通情報や今日の運勢、天気を一気見」

 毎日慌ただしい朝のお出かけ前、テレビを時報替わりにしている人も多いと思うが、連ドラがはじまるとつい見てしまうことも。NHK朝の連ドラ『カーネーション』など、毎日放送される番組は、リアルタイムで見なくても、その週の分をまとめて好きな時間に一気見できるので、朝の時間に余裕が生まれる。週のはじめに先週の放送を確認するといったことも簡単だ。

 お出かけ前にチェックしたい、今日の運勢やお天気、交通情報なども、出かける前に各局をザッピングしてチェックしたり、起きてすぐまとめてチェックできるので安心。ラッキーアイテムを忘れることもなくなる?

(2)仕事が変わる「取引先に関する情報や社内で出た話題をチェック、株価とニュースの関係を分析も」

 社内で上司や同僚が話していた番組を帰宅後にチェックしたり、訪問する取引先の会社のニュースなどを押さえておこう。「先日、ワイドショーで紹介されているのを拝見しましたよ」といった話題は、先方もうれしいだろう。タイの洪水などのニュースで、現地の状況を映像で確認して気配りするといった配慮も。

 ニュースや経済番組だけでなく、バラエティ番組などに、新製品や新しいビジネスのアイデアが登場する場合もある。例えばフジの「ほこ×たて」は、自慢の能力が真逆の製品を、対戦形式で紹介するという番組。その性能を目の当たりにできるのだ。通販番組は、商品のウリ文句や紹介の仕方をいただきだ。ショップチャンネルや深夜の通販番組枠などで人気のキャスターは、盛り上げ方にも学べることも多そうだ。

 株価の変動は、数日間のニュースや社会情勢をあわせて分析することで、思わぬ動向が見えてくる場合もある。

(3)ネットとテレビの関係が変わる「ツイッターなどであがったテレビの話題を追いかけてすぐ確認」

 これまでは「いま、××が出てたなう」といったツイートを見てすぐにテレビをつけても、すでに放送が終っていることが多かった。だがこれからは、ツイートされた番組を遡って、自分も直接、見ることができる。リツイートなどで時間がたった情報も後追いが可能な上、ツイートされた時間や分をチェックすることで、番組内のどのあたりを見れば良いか、インデックスがわりに使えるようにもなる。

 これまでも、膨大な情報を提供してきたテレビだが、全録時代になることで、より積極的な情報源として活用したり、これまでにない楽しみ方ができるようになりそうだ。後編では、さらに「“全録”生活の遊び方・楽しみ方」の残り7つなどを紹介する。

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