2012年7月4日水曜日

米経済を覆う恐怖 文字通り崖下に突き落とされるのか

欧州危機を教訓に、先手先手を打ってもらいたいですね…アメリカがこけると、欧州レベルの騒ぎじゃすまないよ。


 去年の今ごろ、米国を震え上がらせていた経済用語は「デット・シーリング」だった。連邦債務が法定上限に達し、その引き上げの是非をめぐり、オバマ政権と野党共和党が衝突。米国史上初のデフォルト(債務不履行)危機に冷や汗をかいた。

 そして今年、米メディアが繰り返し報じるキーワードは「フィスカル・クリフ(財政の崖)」。来年に増税や歳出の強制削減が集中し株価の暴落や景気に壊滅的打撃を与えるとされる問題で、米経済が文字通り崖下に突き落とされることへの恐怖が米社会を覆っている。

 米国では、ブッシュ政権下で導入された社会保障税の減税や所得減税が2012年末で期限が切れる。これに加え、来年から国防費を中心に1兆2000億ドルの歳出が強制削減される。皮肉なことに、歳出の強制削減は昨年の「デット・シーリング」危機を受けた財政改革の一環として導入された。

 議会予算局(CBO)は、このまま政府や議会が対策を取らなければ、「来年上期はマイナス成長でリセッションに突入する可能性が高い」と指摘。「株価が3割吹き飛ぶ」と予測する民間調査機関もある。米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長をして「景気に重大な脅威」といわしめ、ロイター通信も「影響はデフォルト危機より大きく、時間も残り少ない」と警告している。米経済が墜落すれば、当然世界経済も深手を負う。

 気になるのは、危機の回避を担うホワイトハウスと議会から緊迫感が今ひとつ伝わってこないことだ。ガイトナー米財務長官は、米国は今も財政問題に直面しているが、「問題に対処する能力は債務危機の欧州よりも高い」と強気だ。

 議会も上院は民主党、下院は共和党が掌握するねじれ議会で、大統領選も迫り歩み寄る気配がみられない。ブッシュ減税の延長一つとっても、民主党が「富裕層への減税打ち切りが条件」と主張し、共和党は「増税で景気は悪化する」と非難する。議会に解決の時間的猶予を与えるためとして1年間の暫定延長を説くクリントン元大統領のような声は少数派だ。

 セントルイス地区連銀のブラード総裁は「オバマ大統領も議会も大統領選まで何の措置も講じようとしない」と失望を隠さない。大統領選が終わっても「財政の崖」を回避できる保証はない。選挙でたとえねじれ議会が解消されても、実際に新議員が就任するのは来年。そう考えればなおさら、問題の先送りが許される状況ではない。

 スタンフォード大のエドワード・ラジアー教授は米紙ウォールストリート・ジャーナルへの寄稿で、「差し迫る崖から遠ざかるべきだ」と訴えた。添えられたイラストには、はるか崖下をこわごわとのぞき込む男性が描かれていた。おそらく崖から飛び降りる勇気は誰も持ち合わせていない。いや、そう信じたい。

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