なんとかして、復興の資金を作らないといけないですね。子ども手当てなど、削れるところはたくさんありそうですが。
東日本大震災の復興財源の調達に向け、日銀の国債引き受け検討がとりざたされていることについて、市場関係者の間では財政破綻につながるとして強い危機感が浮上している。
市場から日銀が国債を買い入れる場合と異なり、直接引き受けの場合、市場による金利を通じた国債発行のコスト評価もなくなり、財政規律の崩壊につながりかねない。歴史的にみても高インフレを招く原因になることが知られており、巨額の国債発行残高を抱える日本の現状では、1、2ポイントでも金利が上昇すれば利払いコストの増大から財政破綻をもたらすことになると市場関係者は懸念を隠さない。
<日銀の国債引き受け、与謝野担当相とエコノミストの懇談でも話題に>
日銀による国債引き受けは、30日に開かれた与謝野馨経済財政担当相と民間エコノミストの懇談でも話題にのぼった。与謝野担当相は、国債増発の際の金融市場の反応を気にしていたもよう。与党内には復興のための国債を日銀が引き受ければ問題はないとの意見が浮上している。これについて出席したエコノミストらは非常に危険だとして反対意見を述べた。
BNPパリバ証券・チーフエコノミストの河野龍太郎氏は「副作用があまりに大きい。いったん引き受けが始まれば復興国債だけでは済まなくなり恒常化するのが歴史の常」と主張。JPモルガンのチーフエコノミスト・菅野氏も同様の意見を表明。すでに、現在の国債市場でさえ、発行残高の大きさや価格形成は、日本の財政クレジットコストを十分に織り込んでおらず、国債バブルといってもよい状況だと説明、日銀の国債引き受けはそれ以上に非常に危険だとした。
<高いインフレ率を招く可能性>
政治家の間には、日銀が現在行っているように市場から国債を買い入れることと直接引き受けることの違いが認識されていない面もあるようだ。第一生命経済研究所・主席エコノミストの熊野英生氏は「ファイナンスをどうするかという問題ではなく、財政規律の崩壊の問題だととらえてほしい」と説明する。
日銀が政府にとって便利な金庫となれば、とめどもない流動性供給があっという間にインフレをもたらすことは歴史も証明している。
それがなくとも大震災の影響で、「今後はデフレではなくてインフレ圧力が高まる」(菅野氏)との見方が浮上している状況だ。企業の供給能力が低下する一方で、復興需要や企業の投資増加が順調に発生すれば需給ギャップを縮小させる。貿易・経常収支の赤字転落の可能性は円安を進行させる。
今年半ばには輸入の増加による貿易赤字を予想する声が広がっている。これは経常収支の赤字転落がそう遠くない時期に訪れることを示唆し、円安が加速する可能性がある。これまで簡単には崩れなかったデフレ構造が変化する可能性が高まっている。
さらに日銀引き受けの議論が現実味をおびれば、それをきっかけとするインフレ加速は確実だとエコノミストらは見ている。
<長期金利が1、2ポイント上昇すれば財政破綻へ>
インフレに伴って長期金利が上昇すれば、巨額の国債利払いにあえぐ日本の財政はあっと言う間に破綻すると指摘されている。
財務省の試算(11年度予算の後年度歳出歳入への影響試算より)では、慎重な経済見通しを前提にした場合、11年度の長期金利が仮に2%とした場合に、国債費は2014年度に27.1兆円となるが、長期金利が1%ポイント上昇すれば14年度の国債費は4.2兆円増加する。これは消費税の2%に相当する金額だ。長期金利が2%上昇すれば8.5兆円の増加となり消費税4%に相当する。
河野氏は「1─2 ポイントの政府の資本コスト上昇が財政破綻をもたらす。復興支援が、新たな危機(財政危機)につながることは避けなければならない」としている。
<政府も日銀も規律をもって対応すべき>
白川方明総裁が何度も国会で答弁しているように、日銀自身が国債直接引き受けの可能性を否定するのは当然だが、一方で、日銀も復興支援に積極的に関わる姿勢を強調しすぎるあまり政府の財政規律が崩れることのないよう、規律をもって対応すべきとの意見も出てきた。
第一生命経済研究所の熊野氏は、日銀が財政支援をしようにも、政府与党自体が規律を失いかけていると見ている。「日銀による国債直接引き受けなど、きちんと詰めていないと思われる議論が表に出てしまうなど、政府与党のガバナンスの足腰が弱く、非常に危うい」と指摘。一方で、日銀についても「資産買い入れ基金で国債を買い入れる際に銀行券ルールとは別枠にした。このアリの一穴が今やダムの決壊につながりかねない状況」と危惧している。
ファィナンスの話ばかりが先行している状況だが、復興支援はまず金額ありきではなく、どのような復興を目指すのかを考え、それを実務的に積算した上で総額が出てくるものであり、そうした規律ある財政支出を行うべき、との批判が強まっている。
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